研究課題/領域番号 |
23520919
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀内 秀樹 東京大学, キャンパス計画室, 准教授 (30173628)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 貿易陶磁器 / 東アジア / 消費 / 江戸 |
研究概要 |
今年度は、日本特に都市江戸の消費動態の調査とその前提になる貿易陶磁器のバリーションの把握のために国内消費遺跡、国内流通遺跡、海外生産遺跡の調査を行った。調査の手順・方法は、国内外の研究協力者と調整をしつつ行った関係で一部変更を行った。 江戸では、江戸城、丸の内三丁目遺跡、都立向ヶ丘高校遺跡、汐留遺跡の出土貿易陶磁器の収蔵資料の調査を行った。その結果、調査報告書に掲載されていない貿易陶磁器が多く確認できた。この中には火災で廃棄された一括資料などが含まれ、特に丸の内三丁目遺跡からは、15世紀の中国龍泉窯青磁、17世紀の中国景徳鎮窯の揃いの皿・鉢類、オランダ産茶道具、李朝朝鮮の茶碗など江戸の消費を説明する上で重要な資料も確認できた。 国内消費流通遺跡では、大坂茶屋町遺跡、同鍋島藩蔵屋敷跡、京都相国寺跡、平戸オランダ商館跡、沖縄首里城などの資料の調査を行い、江戸以外の地域における貿易陶磁器の様相を確認した。大坂茶屋町遺跡と鍋島藩蔵屋敷跡では、江戸遺跡では確認されない大型清朝磁器が確認された。京都相国寺跡では14~15世紀の龍泉窯青磁の大型製品が多く認められ、中世の威信財の確認と江戸時代の伝世品との対比という意味で収穫は大きかった。平戸オランダ商館跡では、1616年以前に廃棄された貿易陶磁器の一括資料の調査を行った。資料はヨーロッパ向けの製品が多く含まれており、目的地に関する議論が存在したが、日本出土の製品と類似性が高いことが確認された。 国外生産遺跡では、中国景徳鎮窯における明代の生産状況の調査を行った。考古学的にモノの流通を取り扱う際に関しては生産地同定は不可避であり、当該期の日本で出土する中国磁器のうち景徳鎮窯と福建徳化窯との分類に問題が存在した。これに関して技術、原料などの特徴の調査を行い、こうした問題に関して中国研究者と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・江戸の調査 20/100 報告書掲載資料の集成が未完。掲載以外の資料調査が汐留遺跡が調査中、尾張藩上屋敷跡などが未完。・国内流通、消費遺跡の調査 60/100 長崎、沖縄、対馬の調査が未完。・海外生産流通遺跡の調査 20/100 台湾、インドネシア、フィリピン、ベトナムの調査が未完。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的、計画に沿って進行していく。江戸遺跡出土調査は、これまで刊行された全ての調査報告書掲載資料の集成を24年度に完成させる。この集成は研究協力者に既にお願いしている。掲載以外の出土遺物収蔵庫の資料調査も24年度中の完成に向けて進める。この調査は遺物収蔵庫での写真撮影を中心として行うため調査日は限定される。当初、23年度で行う予定であったが、複数年度にまたがって行うこととした。この際、出土貿易陶磁器資料の多くは破片であるため全体の様子は窺えないものも多く存在する。これに対処するために伝世品との対比を行い、類似する製品の確認を進める。これは中国陶磁器の研究者を新たに研究協力者としてお願いしている。 江戸遺跡以外の調査は24年度前期に台湾、後期に沖縄、長崎、25年度にフィリピン、インドネシア、対馬にて行う。 また、こうした貿易陶磁器流通・消費に対して地域・時代背景を理解することが必要である。関連情報として茶会記、蔵帳の調査も出土調査と並行して行う。調査は24年度から準備を進め、25年度を中心として行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、上記申請書作成時から修正を加えた調査を行うため、若干の変更が伴う。 江戸遺跡出土資料調査と国内外流通・消費遺跡資料調査を行う。江戸遺跡出土資料調査では、報告書掲載資料は集成後の資料集の作成を行う(その他:10万円)。また、収蔵庫資料調査は10回程度行い、この調査・整理にかかる補助が必要である(謝金:20万円)。 江戸以外の調査は、沖縄調査(旅費:10万円)、長崎調査(旅費:10万円)、台湾(旅費:20万円)を予定している。海外の調査では国内現地の研究協力者の協力が不可欠である(謝金:30万円)。 その他、通信費(その他:5万円)、書籍費(物品費:5万円)を予定している。
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