研究課題/領域番号 |
23520919
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀内 秀樹 東京大学, キャンパス計画室, 准教授 (30173628)
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キーワード | 貿易陶磁器 / 東アジア / 消費 / 江戸 |
研究概要 |
今年度は、考古学的調査と史料調査を行い、考古学的調査は都市江戸の消費動態の調査を重点的に行った。江戸出土の貿易陶磁器の調査が、想定より量的に多かったことと収蔵されている施設との調整しつつ行った関係で、調査の手順・方法を一部変更して行った。 江戸遺跡の資料調査では、汐留遺跡、尾張藩上屋敷跡遺跡、鰻縄手遺跡の出土貿易陶磁器の収蔵資料の調査を行った。その結果、従来から多く出土が確認できた陶磁器の他に、多様な貿易陶磁器が確認できた。特に報告書に掲載されていない江戸後期の福建・広東諸窯系の製品が多く確認できたことは江戸の消費を説明する上で重要な成果であった。この収蔵庫調査と並行して報告書掲載資料の集成を行った。 海外の調査は、台湾出土の陶磁器について現地研究協力者と調査を行うとともに朝鮮南部諸窯、中国景徳鎮窯の状況を国内研究協力者と情報交換を行った。台湾の現地調査は、台湾南部の貿易港北港出土資料の調査を行った。東アジアおよび日本の貿易陶磁器の流通を考える際に近隣諸国の流通・消費動態は重要であり、特に日本に近い琉球、台湾、韓国などの状況把握は不可避である。 生産遺跡では、昨年度の景徳鎮窯の調査に加えて研究協力者に依頼し、福建・広東諸窯の調査を行った。 考古学的成果と照射する意味で、茶会記、蔵帳、武家儀礼についての史料調査を研究協力者とともに進めた。茶会記は大名が江戸で行った事例について使用した茶陶の内容、頻度、年代などについて調査を行っている。蔵帳は大名が所持している御道具が記載されている。現存しているものから『加賀前田家表御納戸御道具目録帳』から調査を開始した。武家儀礼も将軍御成など江戸の中で行われた象徴的な行事から研究協力者とともに進めている。これらについては25年度も継続して行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) ・江戸の調査 80/100 報告書掲載資料の集成が未完。掲載以外の資料調査が汐留遺跡が調査中、江戸城(梅林坂地点)などが未完。 ・国内流通、消費遺跡の調査 60/100 長崎、沖縄、対馬の調査が未完。 ・海外生産流通遺跡の調査 40/100 インドネシア、フィリピン、ベトナムの調査が未完。 ・関連調査 40/100 茶会記、蔵帳、武家儀礼などの調査が未完。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的、計画に沿って進行していく。江戸遺跡出土調査のうち報告書掲載資料集成は、おおむね終了、現在編集段階である。これまで集成した全ての資料を25年度に本研究費の報告書の資料集として完成させる。掲載以外の出土遺物収蔵庫の資料調査も25年度上半期まで行い、下半期に完成に向けて進める。この調査は遺物収蔵庫での写真撮影を中心として行うため調査日は限定される。量的に多かったことこともあり継続して行うこととした。この際、出土貿易陶磁器資料と伝世品との対比を行い、類似する製品の確認を進める。これは中国陶磁器の研究者を研究協力を依頼、調査を進めている。江戸遺跡以外の調査は25年度前期に沖縄、後期に長崎について行う。 また、こうした貿易陶磁器流通・消費に対して地域・時代背景を理解することが必要である。関連研究として茶会記、蔵帳、武家儀礼の史料調査も出土調査と並行して行う。これは25年度に行い、茶会記、武家儀礼の研究者に新たに研究協力を依頼した。 本年度は、最終年度であるので、本研究に対する報告会を開催する。報告会では、江戸遺跡出土資料の考古学的研究報告、その歴史的背景として関連研究報告、台湾から研究者を招聘しての流通について研究成果を報告する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、上記申請書作成時から江戸遺跡出土資料調査と成果報告に重点を置く修正を行ったため、若干の変更が伴う。 江戸遺跡出土資料調査と国内外流通・消費遺跡資料調査を行う。江戸遺跡出土資料調査では、報告書掲載資料は集成後の資料集の刊行を行う(その他:40万円)。また、収蔵庫資料調査は5回程度行い、この調査・整理にかかる補助が必要である(謝金:10万円)。 江戸以外の調査は、沖縄調査(旅費:10万円)、長崎調査(旅費:10万円)を予定している。 報告書の作成(その他:20万円)、報告会の催行とこれに海外研究者を招聘(旅費:20万円、通訳10万円)を予定している。 その他、通信費(その他:5万円)、書籍費(物品費:5万円)を予定している。
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