本研究では、縄文時代中期の中部地方西北部おいて土器を周到に複数の縦長の破片に破壊する行為が存在することを、土器片敷き遺構から出土した縄文土器の出土状況と破片接合状況の対照観察によって導きだした。このように一個体の土器から複数の縦長破片を得るには、土中のような、土器の内外から均等に圧がかかる環境を要することを、実験によって確認した。この破壊行為は、土器の形や文様にかかわらず、土器型式圏を超えて分布していることから、縄文社会の地域分化について、製作行為とは異なる破壊行為という新たな観点からも論じ得ることを指摘した。
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