本研究では期間内に、1.発掘調査遺構のデータベース作成、2.都市構造の復元図作成、3.都市内外の可視領域の検討、広範囲の地理的環境から検討、4.都市内の集水システムの解明、5.旧地形の復元を予定していた。 最終年度のため、昨年度課題としていた4・5を含め、全体の作業と検討を行った。1・2は、これまで報告書図をGISソフト上に貼りあわせていたものを、都市構造を探る観点から主な建物と溝や区画施設をトレースして地図上に表現し、それら遺構のデータベースを作り、立体表示も試みた。その上で都市構造や、3に関わり金色堂の可視領域を検討した。4・5については、2の作業を行う中で、昭和30年代以前の地割は12世紀後半まで遡る可能性がでてきたので、旧地割が残る空中写真や都市計画図などもソフト上におとして旧地形をトレースし、12世紀の遺構と重ねあわせて検討した。昨年度から実施している遺構原図のスキャニングは、平泉文化遺産センター所有分、岩手県埋蔵文化財センターの平泉町拠点地区の原図、柳之御所遺跡分を実施させていただいた。これは当初計画にはないため予算の関係で完遂できなかった。データは該当機関と共有している。 都市造営の思想読解という観点からは、夏至の日の出日の入りの確認、秋分の日没、前九年合戦終了日の日の出の確認、平泉周辺のランドマークとなる山の踏査を行った。平泉の主要施設のが周辺の山稜の頂点を向いていることが明らかとなった。 成果は、奈良女子大学古代学学術研究センター「古代のみやこを考える」研究会で「平泉の都市設計―構想と実相」を、平泉町では町内外の人に第14回世界遺産講演会・平成25年度発掘調査報告会にて「GISを利用した平泉の復元―科学研究費補助金成果報告―」を報告した。『古代学』第6号に研究協力者の島原弘征氏と共著で「平泉無量光院の造営プラン-GISの利用に向けての試論-」が掲載された。
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