研究課題/領域番号 |
23520923
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
丹羽 佑一 香川大学, 経済学部, 教授 (50140471)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 先史時代 / サヌカイト / 石器 / 流通 / 専業集団 / 金山 |
研究概要 |
23年度の研究は次の4項目にしたがって「先史時代香川県銀山産サヌカイト製石器の広域流通における回遊する専業集団」の存否、歴史的役割を検討するデータを集積した。(1)実験考古学的手法による検討:金山のサヌカイト製石核素材製作技術である縄文時代の洗谷技法、弥生時代の金山技法には台石を利用する両極打法は用いられない。木製、骨製の礫を支える台が必要である。この点を消費地の石核及び石核素材で検討すると、石核素材生産システム、流通システムを検証することができる。(2)新しい元素比を用いた蛍光X線成分分析による各消費地の金山産サヌカイト製石各素材の採石地点の同定:岡山県津島岡大、百間川沢田、南溝手の縄文遺跡、香川県紫雲出山弥生時代高地性遺跡では金山東地区のサヌカイトを使用するが、高梁川河口に近接する海辺の菅生遺跡では金山南地区のサヌカイトが混出した。中国地方山間部、山陽側西部瀬戸内海沿岸部と金山を結ぶルートの結節点に位置するところから、広島県帝釈峡遺跡群、洗谷周辺遺跡群に南地区のサヌカイトが析出されるか、石核素材生産と流通システムの主体の特定に関連して、24年度の分析が注目される。(3)縄文時代後晩期の金山、各消費地の石核素材の分割技術の復元と統計的処理:金山遺跡で出土したサヌカイト(自然礫・加工礫・砕片)は厚さにおいて、厚(1)、中(1/2)、薄(1/4)と等比級数的に3区分される。それに応じて数量も、少、やや少、多と3区分される。消費地のサヌカイト石核素材は殆どが「薄」に入る。金山では自然礫を3度半割し、1個から4点の「薄」区分の板状石核素材を作り、搬出した。(4)縄文時代の瀬戸内沿岸島嶼の地域社会における生産・流通集団の居留地の検討:菅生遺跡は金山以外では珍しく厚手の石核素材の失敗品を出土する。いわば金山のサテライトに相当する。地理上からもそこに金山操業集団を求めることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金山出土の石核素材製作用ハンマーの産地同定、岡山県貝殻山遺跡出土のサヌカイト製石器の蛍光X線分析について未着手、紫雲出山・貝殻山・愛媛県八堂山高地性集落のサヌカイト製石器の剥片剥離技術と金山技法との関係の検討が未完了の2点が遅れている理由である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画を完遂することを第一目標とし、加えて23年度に研究対象に追加した岡山県菅生遺跡の出土サヌカイト製石核素材の成分分析を拡大、および石核素材生産の技術的な検討、統計的処理から、金山遺跡的石核素材の生産の展開を吟味することを通じて、生産・流通の専業集団の存在を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は調査旅費と人件費の使用が計画より下回ったからである。次年度使用額は次年度に追加した菅生遺跡出土石器を中心とする調査、未完了の紫雲出山遺跡・貝殻山遺跡・八堂山遺跡の調査に関わる経費に重点的に充てる。
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