研究課題/領域番号 |
23520923
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
丹羽 佑一 香川大学, 経済学部, 教授 (50140471)
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キーワード | 先史時代 / サヌカイト / 石器 / 流通 / 専業集団 / 金山 |
研究概要 |
5項目に拠って先史時代金山産サヌカイト製石器の広域流通における回遊する専業集団の存否、歴史的役割を検討するデータを集積した。 ①実験考古学的手法による岩質の技法に対する適合性の検討―生産・流通集団の特徴の分析:縄文・弥生時代の金山での板状石核の製作と消費地での分割には、窪みに敷いた砂利を製作台に復元できる。消費地と金山の技術は同じである。弥生時代の石剣の製作は打製石斧と同じであり、金山だけの金山技法による大型剥片は用いない。これらの石器製作に限ると専業集団の想定は不要である。 ②新しい元素比を用いた蛍光X線成分分析による消費地の金山産サヌカイト製石器素材の採石地の特定―生産・流通集団の特定:1)サヌカイトの成分と採石地(縄文時代)岡山型―金山東地区、松山型―金山東地区+金山西地区+金山東地区、香川型―金山東地区+国分台の3類型が知られる。生産・流通集団は東瀬戸内、西瀬戸内、香川県の3地方に区分される。 2)サヌカイトの成分と採石地(弥生時代)香川1型―金山東地区、香川2型―金山東地区+国分台の2類型が知られる。生産・流通集団は香川県―2型、香川県外―1型の地方に区分される。高地性集落は香川1型に入るか。 ③縄文時代後晩期の金山、消費地のサヌカイト石核素材の分割技術の復元と統計的処理―生産・流通集団の特徴の分析:岡山、広島、香川、愛媛県の消費地遺跡は菅生小学校型―原礫+厚・中・薄板状石核、百間川沢田型―中・薄板状石核、永井型―薄板状石核の3類型が知られる。 ④縄文時代の瀬戸内沿岸の地域社会における生産・流通集団の居留地の検討―回遊する専業集団の抽出:菅生小学校型遺跡が居留地に特定される。岡山県菅生小学校裏山遺跡、愛媛県馬島亀ヶ浦遺跡が該当する。沿岸に間隔をおいて分布する。 ⑤瀬戸内海域高地性集落の石器製作技術の検討―金山専業集団との関係分析:2集団間の特別の結び付きは明らかでない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金山産サヌカイト製板状石核出土遺跡の叩き石(ハンマー)の石材鑑定が完了していない。なお予定した蛍光X線成分分析は行わない。産地の分析データが準備されていないからである。石材鑑定の目的は金山遺跡、消費地遺跡の叩き石の石材産地の特定であるが、本研究では肉眼観察によって産地を特定する。 岡山市貝殻山遺跡・神戸市会下山遺跡(高地性集落)出土のサヌカイト製石器の蛍光X線分析が未着手である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画を完遂することを第一目標とし、加えて、研究成果を確かなものにするために新しい元素比を用いた蛍光X線成分分析事例を増加する。また岡山県菅生小学校裏山遺跡、愛媛県馬島亀ヶ浦遺跡が該当する金山産板状石核生産・流通専業集団の居留地を瀬戸内海沿岸、特に未特定の広島県域を中心に探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、研究成果を確かなものにするために、各消費地の金山産サヌカイト製石器素材の蛍光X線成分分析と報告書作成に重点的に充てる。
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