5項目に依って先史時代金山産サヌカイト製石器の広域流通における回遊する専業集団の存否、歴史的役割を検討するデータを集積した。 ①実験考古学的手法による岩質の技法に対する適合性の検討―生産・流通集団の特徴の分析:金山出土のハンマーに花崗班岩製が認められる。香川県域には珍しいが岡山県域では高梁川などで普通に認められる。②新しい元素比を用いた蛍光X線成分分析による消費地の金山産サヌカイト製石器素材の採石地の特定―生産・流通集団の特定:弥生時代の消費地遺跡の採石地構成は1型―金山東、2型―金山東・国分台が知られるが、香川県東部の中期遺跡の分析から3型―金山東・淡路島第3群を加えることになった。金山での石器生産の専業化と合わさって、石器生産・流通の大きな変化を示すものである。③縄文時代後晩期の金山、消費地のサヌカイト石核素材の分割技術の復元と統計的処理―生産・流通集団の特徴の分析:金山と消費地遺跡の金山産サヌカイト製板状石核を比較すると、金山産のサヌカイト製石核が消費地で分配のために再分割されていること、金山産サヌカイトは消費地間では金山からの遠近にかかわらず大きさ・厚さは同じであることが明らかとなった。これは、消費地は遠近に関わらず、金山産石核を生産者から直接入手していることを示すものである。④縄文時代の瀬戸内沿岸の地域社会における生産・流通集団の居留地の検討―回遊する専業集団の抽出:淡路島佃遺跡に専業集団が認められるが、彼らが瀬戸内海を回遊していたかどうかは、不明である。⑤瀬戸内海域高地性集落における石器製作技法の検討―金山専業集団と高地性集落民の関係分析:瀬戸内東部の代表的遺跡芦屋市・会下山遺跡は金山産サヌカイト製石器のあり方が低地の一般的集落と同じである。金山専業集団との特別な結びつきは認められない。以上、24年度までの調査を補足する。 ⑥調査研究報告書を作成する。
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