研究課題/領域番号 |
23520924
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
吉田 広 愛媛大学, ミュージアム, 准教授 (30263057)
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研究分担者 |
塚本 敏夫 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
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キーワード | 武器形青銅器 / 研磨実験3Dレプリカ / 研磨実験、3Dレプリカ |
研究概要 |
本年度は、昨年度作成した3Dレプリカを用いた研磨進行実験を実施した。 福岡市吉武高木遺跡3号木棺墓出土銅剣・銅戈・銅矛を対象に作成した粉体レプリカと樹脂レプリカについて、まずそれぞれの研磨具合を確認した上で、粉体レプリカを練習試行用、樹脂レプリカを実験正編用と位置づけた。そして、当初より研究協力者を依頼していた福岡市教育委員会の宮井善朗氏を6月に招聘し、相互に成果を確認しながら研磨実験を行い、研磨進行に伴う武器形青銅器の形状変化の具体的状況を確認するとともに、必要な道具(砥石)に関する認識を新たにするなどした。 以上の成果を、8月に開催されたアジア鋳造技術史学会で報告するとともに、そこで新たな研究協力者を募り、応じていただいた九州大学の田尻義了氏、高知県埋蔵文化財センターの宮里修氏を3月に招聘し、研磨実験を集中的に行った。この際には、後述する、鋒部折損品の再生実験を粉体レプリカで試行し、これまで想定されていたような形状変化は難しいとの感触を得ることができるなどした。 一方、共同研究者の塚本は、鋒部折損品の実験用レプリカ作成のため、3D計測を実施するとともに、新たに長野県柳沢遺跡出土銅戈8点の3D計測を実施した。これは、一括出土資料中に、研磨進行前(5号銅戈)と研磨進行後(3・4号銅戈)の形状を示す個体を含んだ資料で、3Dレプリカを用いた研磨進行実験を通じて、新たに具体的状況を確認できると考えたからである。これらの3D計測に基づき、吉武高木銅剣1について、鋒部2㎝折損品、同5㎝折損品、吉武高木銅戈の鋒部2㎝折損品、同5㎝折損品、そして柳沢5号銅戈の5点を対象に、樹脂レプリカを各8点製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由;新たな研究協力者の参画を得たことで、実験の精度や客観性が高まったともに、多様な意見を収集することができている。またその際には、23年度に作成できた粉体レプリカが、試行的実験に際して大いに役立った。新たに柳沢銅戈を対象とした実験に加えたことによる追加課題への取り組みと、レプリカ現品である吉武高木3号木棺墓出土青銅器自体の調査が、新たな課題である。
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今後の研究の推進方策 |
製作した各武器形青銅器および鋒折損品の3Dレプリカについて、研磨を進行させることによって、どのような形態変化が生じるのか、吉田および研究協力者において、情報共有をしながら、研磨実験を行う。また、塚本においては、3D計測データ上での諸検討を行う。そして、途中経過を、25年度8月開催のアジア鋳造技術史学会韓国大会で発表を予定している。それらの発表成果、さらに研究協力者からの実験報告と完了した各樹脂レプリカを集積検討し、年度末には研究成果報告書にまとめるところである。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に発注・納品された3Dレプリカ作成費として、約76万円が確実に執行されるところである。 25年度研究費は、実験・研究を行うにあたって必要な物品費として50,000円、研究代表者・共同研究者、さらには研究協力者との打ち合わせや資料調査用の旅費として200,000円、研究協力者への謝金として50,000円、そして研究成果報告書印刷費として400,000円を執行する計画である。
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