24年度に製作した鋒折損品3Dレプリカを用いて鋒再生研磨実験を行った。その中間成果を、とくに朝鮮半島出土青銅器と日本列島出土青銅器との比較という視点を加えて、8月に韓国慶山市嶺南大学校で開催されたアジア鋳造技術史学会嶺南大会で口頭発表した。 柳沢遺跡出土5号銅戈3Dレプリカについても、まずは研磨進行実験を施し、通常の研磨を行っていくと、山地銅戈と同様に、脊上に鎬が立つことを確認した。さらに、斧刃状加工の方法について、持砥石による研磨実験と置砥石による研磨実験を行い、後者による加工である可能性が高いことを導き出した。その成果の一部は、11月に長野で開催された日本考古学協会2013年度長野大会での研究報告において、信州における銅戈および銅戈形石製品に共通する特徴であることを指摘した。 実験研究成果の総括として、12月には、吉武高木遺跡3号木棺墓出土武器形青銅器現品を保管する福岡市博物館で場所の提供を受け、研究協力者である宮井氏・宮里氏・柳田氏と代表者吉田が参集して研磨実験を行い、それぞれの実験結果を最終的に確認した。 3カ年の成果として、研磨進行および鋒折損再生に伴う武器形青銅器の形態変化の実態を具体的に提示することができ、銅矛・銅戈に対し、銅剣において研磨進行に伴う形態変化が大きいこと、鋒折損再生の範囲は限定的であること、斧刃状再加工においては磨製石器製作との関連が窺えること等を導くことができた。 以上から、武器形青銅器のライフサイクルとして、使用に伴う研ぎ減り・再生が限られ、大きな欠損を生じた場合は、原料として鋳潰された、あるいは小型利器素材として分割・流通した可能性が高いと結論づけた。
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