研究課題/領域番号 |
23520927
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
酒井 清治 駒澤大学, 文学部, 教授 (80296821)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 考古学 / 飛鳥時代 / 寺院跡 / 窯跡 / 武蔵国 |
研究概要 |
基礎資料集成として、高橋史朗氏所蔵寺谷廃寺資料と発掘調査資料で未実測の瓦を実測した。高橋史朗氏の軒丸瓦は寺谷廃寺出土の中でも最大で、多くの情報を得ることが出来た。発掘調査未実測の瓦は、叩き文様が確認できる資料を特に選び行った。これによりほぼ寺谷廃寺の平瓦の特徴が判明してきた。しかし、今後寺谷廃寺A地点の瓦の実態調査が必要であることが再確認された。 今まで胎土分析していなかった、寺谷廃寺A地点の瓦を2名の所蔵者から提供して頂き、また、新たに寺谷廃寺B地点と平谷1号窯の瓦と共に胎土分析を行った。寺谷廃寺B地点の瓦はすでに前回分析したが、今回肉眼的に明らかにB地点の特色と想定できる胎土1a類について分析した。平谷1号窯については、窯で最終床面に分布している最終焼成品を選び、どこへ供給したか検討する目的で分析した。胎土分析の結果を肉眼的胎土観察と比較を行い、両者の関係について検討したが、両方の分類には大きな違いはなかった。この結果から平谷窯跡と寺谷廃寺A・B地点の需給関係について検討したが、分析結果と共に『駒澤考古』に掲載した。 2月16日~22にまで、滑川町教育委員会とともに寺谷廃寺B地点で最も高く、建物があったのではないかと推定されていた地域の地形測量調査を行い、寺院跡の痕跡を検討した。 3月20日~24日まで韓国へ行き、百済瓦との瓦当文様、技法との比較検討を行った。特に類似する国立扶餘文化財研究所が発掘調査した軍守里廃寺の瓦の実見は大きな成果であった。特に叩き技法の違いは今後の研究に資するものがあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた寺谷廃寺・平谷窯跡瓦のうち未実測の資料、高橋史朗氏所蔵資料を大学院生2名を使い実測できたこと。また、寺谷廃寺・平谷窯跡の理化学的蛍光X線回析と化学分析による胎土分析を行った。特に前回の分析で出来なかった寺谷廃寺A地点の瓦の分析が出来た。これにより寺谷廃寺A地点とB地点の違いを明確に出来たこと、その瓦がどこから来たのかを平谷窯跡出土資料と比較検討でき、平谷窯跡から供給されていたことが確認できたことが成果である。寺谷廃寺B地点の測量調査を行い10cmの等高線をとったことは、寺跡を地表からの観察検討を行うことに使用できる。韓国国立扶餘博物館で軍守里廃寺の資料を実見し、寺谷廃寺との比較検討が出来たが、軍守里廃寺が平行叩き、寺谷廃寺が格子叩きの違いがあり、他の寺跡との比較検討する必要が出てきたことで、今後の課題が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に実見した韓国百済の寺院跡出土の瓦調査と共に、寺谷廃寺と類似する飛鳥時代寺院跡出土瓦を調査する。また、平谷窯跡の検討を行い、須恵器窯、瓦窯との比較を行い、系譜について探る。平成24年度以降も滑川町教育委員会と寺谷廃寺の調査を行う予定であるが、滑川町教育委員会との協議を行いながら調査対象、調査方法を詰めていきたい。寺谷廃寺に関する資料集成と寺谷廃寺建立と関わる関連寺院跡の資料実測、集成を行い、最終年度に向けて、寺谷廃寺創建の背景、東日本の初期寺院導入について考察に向けた研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
寺谷廃寺と瓦当文様、あるいは技法が類似した資料を調査する目的で、韓国で百済の寺院跡出土瓦と、日本での飛鳥時代寺院跡出土瓦を調査するための旅費。大学院生を研究協力者として、寺谷廃寺・平谷窯跡関連資料の集成・実測を行うための人件費。資料集成の際の複写費。
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