本研究の結果、以下のような秦から前漢前期にかけての統治の実態が明らかになった。(1)秦の占領地では副葬飲食器の中心となっていた礼器系セットが姿を消す。この変化は、礼器を威信材としていた各国の支配層が、秦の占領により消滅した結果と考えられる。ただし秦墓の副葬飲食器には、秦の中心であった西安地区のものが持ち込まれる地域と、地域色が強い日用器が副葬される地域があり、秦の支配に地域的な強弱があったことが分かる。(2)前漢前期の墓制は秦のものが継承されるが、上記のような地域色が徐々に解消される方向性が認められる。この変化は漢の支配が緩やかにではあるが、着実に浸透していった結果であると考えられる。
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