研究課題/領域番号 |
23520937
|
研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
小椋 純一 京都精華大学, 人文学部, 教授 (60141503)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 微粒炭 / 草原 / 森林 / 火 / 標本 / データベース |
研究概要 |
草原的植生が燃えた場合に残る微粒炭群と、森林が燃えた場合に残る微粒炭群の違いを明らかにするために、実際に草原的植生が燃えた場合に残る微粒炭群と、森林が燃えた場合に残る微粒炭群を採集した。そのうち、草原的植生が燃えた場合に残る微粒炭群は、今も毎年草原への火入れが行われている九州の阿蘇地域において、平成 24年 3月 11日~平成24年 3月 12日にかけて行った。また、森林が燃えた場合に残る炭や微粒炭の採集は、平成23年の冬と春に大きな森林火災のあった兵庫県高砂市鷹ノ巣山周辺および兵庫県姫路市広畑区の山地において、平成 24年 3月 7日~平成24年 3月 8日にかけて行った。 また、微粒炭のデータベース作成のための植物標本の採集を、上記調査地(九州・阿蘇地域と兵庫県南部)において、上記調査の際に併せて行った。 一方、微粒炭および微粒炭分析に関する国内外の情報収集と、微粒炭分析に関わる自らの研究発表のため、国際第四紀学会(INQUA Congress:平成23年7月21日~平成23年7月27日にスイス・ベルンで開催)、日本植生史学会(平成23年11月5日~平成23年11月6日に弘前大学で開催)に参加した。 また、本研究の一環として、『森と草原の歴史─日本の植生景観はどのように移り変わってきたのか』(古今書院、2012.4)を執筆。本研究の初期段階の報告として、今後の研究に資するため研究成果をまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、本研究の一環として、『森と草原の歴史─日本の植生景観はどのように移り変わってきたのか』(古今書院、2012.4)を執筆。本研究の初期段階の報告として、今後の研究に資するため研究成果を公開するに至った。その本の執筆に多くの時間を割くこととなり、当初の研究計画よりやや遅延しているが、今年度には、昨年度予定通りできなかった部分、及び今年度予定の研究を遂行できる見通しである。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に予定通り進まなかった部分を急いで進めるとともに、当初平成24年度以降に予定していた研究も鋭意行う。 具体的には、森林が燃えた場合に残る炭や微粒炭群の採集と分析、また草原的植生が燃えた場合に残る微粒炭群の採集と分析を継続して行うとともに、阿蘇などの草原地帯、および日本各地の森林地帯において採集した植物をもとに、組織ごとにいくつかの温度条件を設定して微粒炭をつくり、それを落射顕微鏡で写真撮影(800倍)し、種・部位ごとの微粒炭の形態のデータベース化の作業を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、前年度に予定通り進まなかった部分を急いで進めるとともに、当初平成24年度に予定していた研究も行う。そのうち、森林が燃えた場合に残る炭や微粒炭群の採集については、平成24年度に大きな森林火災が発生するところがあれば、そこも候補地としたい。また、過去に大きな森林火災が発生した場所で、平成23年度に調査した場所(兵庫県南部)とは、燃えた植生のタイプなどが違うところも、その候補地となる。その具体的な候補地としては、たとえば、秋田県男鹿市の寒風山(低木林の火災;2001年)、埼玉県小鹿野町の父不見山(スギ・ヒノキ植林地の火災;2000年)、茨城県水府村の男体山(落葉広葉樹林の火災;2002年)などがある。あわせて5~6箇所程度の調査地点で行いたい。 なお、森林火災はマツ林などの針葉樹林で発生しやすいが、茨城県水府村の男体山の例などはあるものの、広葉樹の高木中心の林では火災は一般に発生しにくいため、実験的に高木の広葉樹の枝や幹をやや大規模に燃やして炭や微粒炭をつくる実験も行いたい。 また、草原的植生が燃えた場合に残る微粒炭群の採集については、伊豆半島の大室山、山口県の秋吉台、広島県北広島町の雲月山を候補地としたい。 一方、阿蘇などの草原地帯、および日本各地の森林地帯において採集した植物を、組織ごとにいくつかの温度条件を設定して微粒炭をつくり、それを落射顕微鏡で写真撮影(800倍)し、種・部位ごとの微粒炭の形態のデータベース化の作業を始める。平成24年度は、温度条件などの設定を多くする植物種を10種、そうでないもの50種を対象に行いたい。 上記計画を実行するために、調査旅費(約50万円)、電気炉などの実験用器材(約60万円)、写真撮影およびデータベース化のための謝金(約40万円)、また、国際学会と国内学会への参加費(約30万円)が主な研究費の使途となる予定である。
|