研究課題/領域番号 |
23520937
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
小椋 純一 京都精華大学, 人文学部, 教授 (60141503)
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キーワード | charcoal |
研究概要 |
土壌や泥炭に含まれる微粒炭の起源となった植物種や植生のタイプの特定に関する基礎研究を深めることが主な目的である本研究において,平成24年度には次のような研究を行った。 ①実際に草原や森林が燃えて生成された微粒炭を確認するために,草原では静岡県伊東市の大室山(5月20日),山口県美祢市の秋吉台(10月12日~14日)において草原が燃えた跡地の微粒炭採取を行うとともに,それらの草原の植物を標本として採取した。また,秋吉台では,3地点の土壌断面から土壌を垂直方向に連続的に採取し,草原に火が入り始めた時期を検討するための土壌試料を採取した。また,森林については,10月中旬に火災のあった広島県三原市深町の山林火災跡地,また2月に火災のあったニュージーランド,オークランド北方約100kmのKaipara Harbour南方の山林火災跡地において,森林植生が燃えた跡地の地表の微粒炭や炭片の採取を行った。また,燃えた樹木等の一部を標本として採取した。 ②前年度調査を行った熊本県阿蘇地域の草原の微粒炭についての観察・考察結果についてIPC XIII / IOPC IX (8月28日・中央大学後楽園キャンパス)において,前年度調査を行った兵庫県南部の森林火災跡地についての観察・考察結果について日本植生史学会(11月24日・アオーレ長岡〔新潟県長岡市〕)において,10月中旬に火災が発生した広島県三原市深町の森林火災跡地の微粒炭についての観察・考察結果について日本生態学会(3月7日・静岡県コンベンションアーツセンター)において発表した。また,応用的研究として鳥取県伯耆町井後草里遺跡(Tr7)の微粒炭分析結果について,日本第四紀学会(8月20日・立正大学熊谷キャンパス)において発表した。 ③微粒炭についての考察の論文も含んだ著書(単著・『森と草原の歴史』古今書院,2012年4月)を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進展がやや遅れている主な点としては,採取した試料の分析・考察,微粒炭のデータベースの構築,学会発表結果の論文化がある。 その理由としては,当該年度に本務校の校務がやや多かったこともあり,前年度に著書の執筆に追われたことによる研究の遅れが取り戻せなかったことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,新たな調査地において微粒炭の試料採取を継続するとともに,これまでに採取しながら未分析の試料の分析・考察を行う。また,微粒炭のデータベースの構築を急ぐとともに,学会発表を行った考察の論文化を進めたい。 次年度に使用する予定の研究費は,これまでの研究がやや遅れていること,また購入した電気炉の価格が,予定したよりも安かったため,予定よりも多くなっている。しかし,今後研究を進めてゆく過程で,翌年度末には当初予定した研究費使用額に近づけたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
新たな調査地としては,福井県から秋田県にかけての日本海側の草原(または旧草原)での試料採取,またこれまで調査した森林火災跡地は,主に地表部が燃えたところであったため,樹木も激しく燃えた森林火災跡地(北米カリフォルニアなど)での試料採取も行いたい〔45万円:予定支出額・以下同様〕。 また,適宜研究補助員も使いながら試料の分析をより速く行うようにしたい〔20万円〕。一方,微粒炭のデータベースの構築にも,やや多くの費用がかかることも考えられる〔40万円〕。また,旧草原などで採取した微粒炭のC14年代測定を数点実施したい〔25万円〕。加えて,いくつかの学会での発表を継続して行う〔35万円〕とともに,考察の論文化を進める〔15万円〕。そのほか,引き続き微粒炭の抽出,観察のために試薬等が必要となる〔9万円〕。
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