研究課題/領域番号 |
23520937
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
小椋 純一 京都精華大学, 人文学部, 教授 (60141503)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 微粒炭 / 植生 / 歴史 |
研究実績の概要 |
本研究において、平成26年度には次の研究を主に行った。 ①微粒炭等炭化物についての基礎的研究の一環として、平成26年4月から5月にかけて国内で発生した比較的大きな山林火災現場4箇所を訪ね、火災から間もない場所の状況を観察するとともに、地表の微粒炭等炭化物を採取し、その分析を行った。その結果、山林火災現場からわずかしか離れていないところでも微粒炭等炭化物は地表に目視できるほどに飛散しにくいこと、草原的植生が燃えたところでは森林火災に比べ地表に微粒炭等炭化物が多量に残ることが多いこと、森林火災の場合、生木は樹皮が焦げるだけで立った状態で残ること、森林火災でも樹木の材の微粒炭が残りにくいことなどが明らかになった。 ②微粒炭分析の応用研究として、山口県中西部に位置する秋吉台の土壌中の微粒炭からその草原の歴史などを考えた。試料とした土壌は、地面の上部から下方に垂直に5cm、あるいは土壌の色相などに応じて数cmごとに採取し、抽出した微粒炭は400倍の倍率で落射顕微鏡を用い意図的にならないよう順次100個観察し、その表面形態ごとに8つタイプと「その他」に分類して検討した。その結果、草原に火が入ることにより草原が維持された期間は過去約1000年と考えられる。一方、放射性炭素年代測定の結果のδ13Cの値からは、測定した約7000年前以降のすべての土層のかつての植生が草原的植生であった可能性が高いと考えられる。それは、野生動物の食圧による草原の維持など、火が入ることがあまりない形での草原的植生の継続があったのかもしれないが、一方、なんらかの理由により試料中の微粒炭が大幅に消滅した可能性も考えられる。これについては、微粒炭分析における新たな基礎研究のテーマとしたい。 ③上記の研究成果について、日本植生史学会など3つの学会で発表した。また、上記①の研究の一部については大学紀要に論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度には日本国内で比較的大きな山火事が多発したことにより、南は九州から北は東北まで、いくつもの場所の山林火災現場の観察やそれぞれの他における微粒炭等炭化物採取とその分析を行い、それについての学会発表や論文執筆をすることもできたが、その研究に多くの時間がとられた。また、通常は調査研究が行いにくい特別天然記念物にも指定されている山口県の秋吉台において関連する応用研究を行える機会を得たため、その研究にもだいぶ時間を費やすこととなった。それらの理由により、本研究で予定している微粒炭のデータべース作成やまとめの論文執筆などが、予定通り進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、残された課題である微粒炭の顕微鏡写真のデータべ-ス作成、まとめの論文執筆を中心に進めてゆきたい。また、新たに山林火災が発生した場合にはその現場での調査、国際第四紀学連合(名古屋)などでの研究発表も予定している。そのうち、微粒炭のデータべ-ス作成については、予算が大きく不足する可能性もあるが、その場合には、デジタル図鑑を作成し無償配布するなどしてそれに代えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度には日本国内で比較的大きな山火事が多発したことにより、南は九州から北は東北まで、いくつもの場所の山林火災現場の観察やそれぞれの地における微粒炭等炭化物採取とその分析を行い、それについての学会発表や論文執筆をすることもできた。また、通常は調査研究が行いにくい特別天然記念物にも指定されている山口県の秋吉台において関連する応用研究を行う機会を得た。しかし、それらの研究に時間が多くとられ、本研究で予定している微粒炭のデータべ一ス作成やまとめの論文執筆などが、まだ途中の段階であり、予定通り進めることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額の予算は、微粒炭の顕微鏡写真のデータベース作成、まとめの論文執筆、また新たに山林火災が発生した場合にはその現場での調査、国際第四紀学連合(名古屋)などでの研究発表のための使用が中心となる予定である。そのうち、微粒炭のデータベース作成については、予算が大幅に不足する可能性があるが、そのような場合には、デジタル図鑑を作成し無償配布するなどして、それに代える予定である。
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