研究課題/領域番号 |
23520938
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
犬木 努 大阪大谷大学, 文学部, 教授 (40270417)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日本考古学 / 古墳時代 / 古墳 / 埴輪 / 工人 / 手工業生産 |
研究概要 |
畿内中枢部における埴輪生産組織の実態解明には、各古墳出土埴輪の悉皆的な調査研究を必要とする。今年度は主に下記のような調査研究を実施した。まず、宮内庁書陵部所蔵の大阪府堺市百舌鳥御廟山古墳出土埴輪について、数回にわたって調査研究を実施し、観察・計測・写真撮影・拓本採取を行った。当該調査研究を通じて、畿内中枢部大形古墳の埴輪製作における工人編制の一端を解明することができた。 この他、京都府城陽市青塚古墳・芭蕉塚古墳出土埴輪の調査研究も実施し、観察・計測・写真撮影・拓本採取を行った。青塚・芭蕉塚両古墳出土資料については、分析試料を採取させていただき、蛍光X線分析を実施している。当該調査研究を通じて、畿内縁辺部の埴輪製作における工人編制の一端を解明することができた。 また、畿内型埴輪が地方に波及した典型例として、宮崎県西都原古墳群出土埴輪の調査研究を実施し、宮崎県教育委員会所蔵資料・京都大学総合博物館所蔵資料・宮内庁書陵部所蔵資料とも、図化・撮影・拓本採取など当初予定していた全資料の調査研究が終了したところである。以前に実施した東京国立博物館所蔵西都原古墳群出土埴輪の調査研究と合わせて、現在確認できる西都原古墳群出土埴輪全ての資料化が完了したことになる。その結果、東京国立博物館所蔵埴輪は西都原169号墳および同170号墳、京都大学総合博物館所蔵埴輪は西都原169号墳および同171号墳から出土したことが確定した。畿内型埴輪の地方波及例としての当該埴輪の調査研究を行う上での基礎作業がようやく終了したことになる。これは畿内中枢部の埴輪生産における工人編制を考える上でも非常に重要な成果である。 上記の調査研究は、いずれも、学生アルバイトの協力を得ながら、調査記録の整理作業や、写真資料の整理作業を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究活動において、畿内中枢部の埴輪生産組織の実態解明に向けて、百舌鳥御廟山古墳を始めとする主要古墳出土埴輪の調査研究を順調に進めることができた。ただし、当初予定していた奈良県コナベ古墳出土埴輪の調査研究や、地元各自治体が所蔵している古市古墳群・百舌鳥古墳群の中小古墳出土埴輪の調査研究は必ずしも十分に進展したとは言い難い。宮内庁書陵部所蔵の百舌鳥御廟山古墳では、50本を上回る非常に良好な大型円筒埴輪が出土しており、その調査研究に予想以上の時間を要したことが一因である。ただし、虫食い的に多くの資料に中途半端に手をつけるよりも、百舌鳥御廟山古墳出土埴輪を始めとする遺存良好な資料について、正確かつ詳細な調査研究を実施していくことが重要であると考えている。調査未了・未着手の上記資料については、次年度以降の継続課題として鋭意取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、今年度と同様な基本方針のもとで、畿内中枢部における各古墳出土埴輪の調査研究を継続的に実施していく。具体的には古墳毎に悉皆的な調査研究および資料化を実施する。 宮内庁書陵部所蔵の百舌鳥御廟山古墳出土埴輪の調査研究を継続するとともに、堺市所蔵分の百舌鳥御廟山古墳出土埴輪の調査研究にも着手する。この他、宮内庁書陵部所蔵白鳥陵古墳出土埴輪や誉田御廟山古墳出土埴輪、奈良県コナベ古墳出土埴輪の調査研究も行う予定である。このほか、今年度には実施できなかった地元各自治体所蔵の古市古墳群・百舌鳥古墳群の中小古墳出土埴輪の調査研究や、京都府久津川古墳群(城陽市所在)出土埴輪の調査研究も実施する。 今年度と同様に、学生アルバイトの補助を得ながら、観察調書の作成、等倍写真の撮影、(実測図のないものについては)実測作業、拓本、計測を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使途としては、宮内庁書陵部で所蔵・保管している畿内中枢部の大形古墳出土埴輪の調査に必要な旅費の支出が大きな割合を占めることになる。適宜調査に同行してもらう連携研究者・研究協力者に対する旅費の支出も行うことになる。 また、地元自治体に保管されている古墳出土埴輪の調査については、研究代表者が所属する大学の近隣地域なので旅費の支出は少額で済むが、作業補助を行う大学院生や学部学生に対する謝金の支出が必要となる。 このほか、資料調査に必要な消耗品や、観察調書や図面、写真の整理に必要な消耗品を購入する必要がある。 なお、今年度研究費のうち16,470円については次年度に使用予定である。今年度当初の予定よりも消耗品の購入費が少なかったため、今年度研究費の一部を次年度に使用することとなった。これについては、次年度の旅費の一部に充当していきたいと考えている。
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