当該研究費は、本来、平成23~25年度の3ヶ年で終了予定であったが、諸般の事情のため、補助事業延長申請を行うこととなった。平成26年3月19日付で同申請が認められたため、本研究を平成26年度まで継続することとなった。 平成26年度には、基本的には平成23~25年度までに遂行した調査研究の成果報告書の編集および刊行のみを行うこととなった。平成27年3月に、本研究費による調査研究成果を盛り込んだ報告書を刊行した。 本報告書には、古墳時代中期・畿内中枢地域における埴輪出土事例である城陽市久津川古墳群出土埴輪の調査研究成果および、地方における畿内的埴輪の出土事例である宮崎県西都原古墳群出土埴輪の調査研究成果を所収した。 前者については、三辻利一氏(奈良教育大学名誉教授、大阪大谷大学元教授)の協力のもと、蛍光Ⅹ線分析法にもとづく胎土分析を実施した。実測・観察可能な埴輪については可能なかぎり全個体から分析試料を採取し、古墳相互の胎土の比較研究を行うとともに、各埴輪の考古学的属性との照合作業を実施した。これは、今後、畿内中枢部における同工品分析に必要な基礎データとなるものである。 また後者については、各機関に所蔵されている西都原古墳群出土埴輪の悉皆調査の成果を踏まえ、西都原171号墳出土円筒埴輪(宮崎県立西都原考古博物館所蔵)の全実測図を掲載した。これにより、地方における畿内的埴輪の代表的事例である西都原古墳群出土埴輪の調査研究を推進する上で必要不可欠な基礎データを提示することができた。 今後は、上記の研究成果を踏まえた上で、畿内中枢地域の埴輪生産組織および、地方における畿内的埴輪の生産組織についての分析をさらに広範に推進したいと考えている。
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