最終年度となる2013年は、より詳細なマッピング作業を通して、昨年度までの調査で得た複合的祭祀遺跡を構成する遺構パターンの検証を進めるとともに、部分的な発掘により年代特定の可能な資料を得ることを目指し、過去2年の分布調査において複数の遺跡が確認されるに至ったバンクス諸島モタラヴァ島東部にエリアを限定して現地調査を実施した。2012年には同島南東部において詳細なマッピングを実施できたため、2013年はこれまでに主要遺構の確認はしていたものの、遺跡全域を把握し得ていなかった北東部の2遺跡(Lahatau、Tetai)を対象とした。 2013年の現地調査の結果、過去の踏査時に大型の立石が特徴的である一方、板石積みで構築される典型的祭祀遺構を欠くと見ていたTetai遺跡にも、他遺跡同様の中核的祭祀エリアが存在していたことが確認された。また2012に調査したQetnegを含め、いずれの遺跡も高さ4-50cm程度の石塁が遺跡周辺を走っていることも確認された。石塁自体は遺跡エリアを越えて広域に拡がり、土地区画システムの可能性が考えられるが、本プロジェクトの範疇で追跡することは出来ず、今後の課題として残った。 本プロジェクトでは、モニュメントを備える新たな景観形成にみる社会複雑化と、集約的農耕の進展との相関の把握を視野に入れて研究を進め、調査対象とした複合的祭祀遺構の多くが、農耕生産を基盤として形成されたとする見解を得た。複合的祭祀遺構の形成時期に関しては、遺跡内採集遺物からはいずれも過去数百年を溯ることはない、比較的新しい要素であることが判明したものの、該当期に関してはC14による年代特定が困難であることが障壁となり、代替測定法に供することのできる試料を得られなかったため、精密な時期の特定は叶わなかった。一方、年代測定結果から、ヴァヌアラヴァ島内陸の灌漑水田エリアの開拓自体は、3C`中頃にまで遡り得ることが判明した。
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