ヴァヌアツ北部各地の伝統的社会には、スプェと呼ばれる競争的な地位獲得システムが知られ、付随する様々な祭祀空間が遺跡として残るが、そのようなシステム成立のプロセスについては解明されていない。本研究では、バンクス諸島に見られる板石積み正面構造をもつ祭祀遺構の基礎的情報収集を行い、典型的な祭祀空間の構成を明らかにした。遺構の構築時期は新しく、その多くは西洋接触期以降まで使用されていたと考えられる。また祭祀遺跡の立地を検討し、それらが農耕生産を基盤とする内陸や農耕適地に構築されたこと、その一方で海岸部には貝貨生産や海産資源を基盤に異なる形態の祭祀遺跡が形成されていたことを指摘した。
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