研究課題/領域番号 |
23520944
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
岡田 憲一 奈良県立橿原考古学研究所, 調査課, 主任研究員 (20372170)
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研究分担者 |
大藪 由美子 奈良県立橿原考古学研究所, 企画課, 嘱託 (20566955)
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キーワード | 考古学 / 人類学 / 先史学 / 縄文時代 / 埋葬遺構 |
研究概要 |
本研究は、縄文時代の埋葬遺構ならびに遺物、人骨資料について、考古学的かつ人類学的観点から集成、実査、分析をおこなうことにより、これまで「影響」や「移動」によるものと考古学的に解釈されてきた縄文社会転換期の実態について、人類学的視点を踏まえて究明しようとするものである。 平成24年度は、考古学的研究として、西日本における人骨埋葬遺構群の考古学的属性分析、人骨埋葬遺構の分類、埋設土器(土器棺墓)の集成・検討、そして、西日本以外の地域における人骨共伴土器の観察・記録を計画し、人類学的研究として、西日本・東日本における縄文人骨の肉眼解剖学的観察および計測値等のデータ収集、収集データの整理および分析、縄文人骨集成データベースの作成を計画していた。ただし、全体に研究実施状況が遅延しており、計画のいくつかは未着手となっている。当該年度に実施し得た調査研究は下記の通りである。 考古学的研究としては、近畿地方を代表する良好な人骨埋葬遺跡である滋賀県滋賀里遺跡、大阪府日下遺跡の遺構、出土土器の悉皆調査をおこなった。両遺跡ともに報告分に限らず、未報告分も含めて調査をおこなうことにより、遺跡の実態究明に関する重要な基礎資料を得ることができた。このデータをもとに、人骨埋葬遺構の検討を進めている。これと並行して、埋設土器の集成をおこないつつ、滋賀県滋賀里遺跡および土田遺跡などの埋設土器を実査し、具体的な土器の型式比定と法量計測をおこなった。 人類学的研究として具体的なものは、奈良県観音寺本馬遺跡の埋葬人骨の形態学的特徴の記載と分析にとどまったが、大量の縄文時代人骨を発掘した清野謙次氏の著作の読解から、縄文人骨集成データベースの作成に着手した。これとあわせ、それら縄文人骨の年代を把握するための次年度以降の資料実査に関する課題抽出をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本務との兼ね合いにおいて、時間調整が十分でなく、実地における資料調査、および資料集成が予定通り実施できていないため、研究の進行が遅れている。 特に、当該年度中頃には、予定通りの資料調査をおこなうことができたが、年度後半期になってから、集中的に予定していた実地における資料調査をほとんどおこなうことができなかったことが、その最大の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
春期から断続的に、清野謙次氏調査による縄文人骨埋葬遺跡出土土器の調査をおこない、それら人骨の年代把握をおこなう。それとともに縄文人骨データベースの作成を継続する。 夏期から秋期には、補助員とともに報告書資料の悉皆調査をおこない、それにもとづいた縄文時代埋葬遺跡データベース、縄文人骨データベース、埋設土器データベースの作成をおこなう。また、資料実査遺跡に関して埋葬遺構の分析をあわせておこなう。 秋期から冬期には、本務と調整しながら、国内外の資料実査を積極的におこなうとともに、上記データベースの分析と編集をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度十分実施できなかった国内外の資料調査旅費、ならびに報告書資料の悉皆調査と調査データ整理のための補助員の謝金として主に使用する。また、埋設土器の一部については系統的な放射性炭素年代測定の委託分析を計画している。さらに一部については、調査に伴う必要な資材や図書の不足を補う購入費として使用する。 なお、最終的には、研究成果報告書の印刷製本を予定しており、それにともなう編集作業の補助員の謝金、印刷製本費としても使用する。
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