研究課題/領域番号 |
23520946
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
松井 和幸 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 歴史課長 (10372236)
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研究分担者 |
安間 拓巳 比治山大学, 現代文化学部, 准教授 (40263644)
野島 永 広島大学, 文学研究科, 准教授 (80379908)
鳥越 俊行 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, その他部局等, 研究員 (80416560)
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キーワード | 考古学 / 鋳物 / 鋳造 / 梵鐘 / 甑炉 |
研究概要 |
今年度は、(1)小倉鋳物師が鋳造したと考えられている梵鐘の調査と、(2)芦屋釜の里の作業場を利用して、小倉鋳物師関連遺跡である北九州市小倉北区室町所在の遺跡から出土している資料から中世の鋳物の再現を行った。 (1)では、沖縄県立美術館・博物館に所蔵されている12個の梵鐘を始め、沖縄県内に所在している計14個の梵鐘の肉眼観察、ハンデイ螢光X線分析装置による螢光X線分析を実施した。後者の結果に関しては、今後分析資料数を増やさないと結果を導くことは出来ないが、前者の肉眼観察からは、沖縄県内に保存されている梵鐘は、1456年以降に数年間に集中的に鋳造されたもので、当初小倉鋳物師が係わっていたことは、龍頭の形態などから間違いないことが判った。また、旧首里城正殿の前に掛けてあった1458年に鋳造されたいわゆる「万国津梁の鐘」も、あるいは小倉鋳物師が鋳造に関わっていた可能性も出てきた。今後螢光X線分析の結果などから、原料の青銅がどこから供給されたかなどの解明も必要である。 (2)では、室町周辺の中世の鋳物関連の遺跡から出土している甑炉の資料や鋳型などから溶解炉(甑炉)を復元し、和銑を溶解して、鋤先とヘラの鋳造実験を実施した。鋤先の鋳型の厚い理由は、複数回鋳型を使用するためであることなどが判明した。鋳造そのものは必ずしも成功したわけではないが、原理等はかなりの部分で確認することが出来た。可能であれば次年度に再度問題点を検証し、再実験を検討している。 小倉鋳物師の実態にかなりの部分で迫ることが出来たので、次年度は今年度の成果を再検証する研究を推進する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北九州周辺に中世に存在した小倉鋳物師、芦屋鋳物師など中世鋳物師に関して、遺跡から出土している遺物から当時の鋳造作業をある程度再現することが出来た点と、梵鐘を中心に当時琉球国まで出かけて行った実態など、かなり詳細な内容を追求する事が出来、当初の目的通り研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
全国に分布する小倉鋳物師の鋳造した梵鐘のさらなる追跡調査と、中世の鋳物鋳造作業の再実験を実施し、より完成された方法を検証する。また原料の鉄や銅の供給先も検証の対象とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の最終年度に当たるため、小倉鋳物師製作の梵鐘の追跡調査のための旅費と、中世鋳物師の鋳造再現実験に係る経費を中心に、報告書作成にかかる経費などを含めて使用する予定である。
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