研究課題/領域番号 |
23520948
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
松村 啓子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (60291291)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 家畜伝染病 / 口蹄疫 / 防疫マップ / 宮崎県 |
研究概要 |
平成23年度は、家畜伝染病に対する防疫に焦点を当て、1.平時における主体間の連携、2.宮崎県における平成22年の口蹄疫発生時の防疫措置、3.防疫マップシステムの実効性にかかわる地理情報の管理、の3点について、関係機関に対するヒヤリング調査を実施し、以下のような成果を得た。1.栃木県の県央家畜保健衛生所は、国が発表する家畜衛生情報を、管内の畜産農家全戸へFAXで送信している。この際、廃業等の農家の異動情報を随時収集している。また、防疫意識が薄い小規模な農家と、企業経営に対する衛生管理指導を強化している。一方、宮崎県では家畜保健衛生所管内の畜産農家数が著しく多いため、農家との緊密な連絡体制が未構築であった。口蹄疫発生を受けて、23年度内に県内全畜産農家に対し基本調査と飼養衛生管理基準の指導を完了している。2.平成22年の口蹄疫発生時は、29万頭に及ぶ疑似患畜とワクチン接種家畜の埋却地確保が大きな問題となった。宮崎県都農町では22年5月下旬以降、疑似患畜の一部とワクチン接種家畜すべての共同埋却を実施し、発生農家の土地や隣接する第三者の土地が、口蹄疫早期終息のために提供された。都農町の共同埋却の事例は、埋却地不足を解消する有効な方策であると同時に、地域住民の理解を得ることの困難さや、埋却地管理の責任体制という課題も提示している。3.宮崎県における口蹄疫発生時は、防疫マップシステムの農家データが更新されていなかったために、移動制限の対象となる畜産農家の抽出や、防疫措置の対象となる畜舎の所在地確認に手間取るという問題が生じた。このため、宮崎県では各機関が有する農家情報の収集と精査を行い、全戸検査の際にGPS端末を携帯し、位置情報および埋却予定地を防疫マップのデータベースに加えている。また、疑似患畜発生時は、農家の地番までをプレスリリースに載せるという指針を新たに設けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国が「家畜衛生週報」で公表している家畜伝染病および届出伝染病の発生件数、および動物衛生研究所の家畜伝染病発生情報データベースは、ともに都道府県単位の発生情報であり、市町村単位の発生件数は、各県に数ヵ所ある家畜保健衛生所に各々問い合わせねばならない。23年度は北海道、岩手、栃木、群馬、宮崎の各県の市町村別データを入手する予定であったが、栃木は市町村ごとの取りまとめを行っておらず、また他県では宮崎を訪問するにとどまり、旅費に残額が生じた。また、データの入手が不十分であるため、疾病発生の空間的特徴と発生要因を明らかにするための分析が遅れ、分析ツールとなるソフトウェアの導入も行わなかった。 防疫マップについては、23年度末に国が全国を対象とする家畜防疫マップシステムを開発したところであり、各都道府県は現在使用している防疫マップを当該システムに移行させる可能性が高い。したがって、各都道府県における防疫マップの現状と、国が開発した防疫マップシステムの導入意向に関する調査を、24年度に行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、農林水産省消費・安全局動物衛生課に対し、新たに開発した家畜防疫マップシステムについてのヒヤリングを行い、47都道府県の家畜衛生担当部署に対しては、特定家畜伝染病の発生に備えたデータベースの作成と防疫マップシステムの導入状況について、郵送によるアンケート調査を実施する。 第二に、宮崎県における口蹄疫発生に関して、埋却地の確保と、ワクチン接種地域における飼養衛生管理基準の遵守について、補足調査を実施する。 第三に、都道府県別の家畜伝染性疾病発生件数のデータを用いて、地理的な傾向性とその背景を明らかにする。その結果を踏まえ、家畜飼養頭数および疾病発生件数の多い北海道および岩手の家畜衛生保健所を訪れ、市町村別家畜伝染性疾病の発生件数のデータを入手するとともに、当該道県における現在の防疫体制を関係機関および農家に対するヒヤリングにより明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、北海道、岩手、東京、宮崎の各都道県における資料収集および関連機関へのヒヤリングのために、相応の旅費を計上している。また、アンケート調査の送付と回収にも研究費を使用する。23年度に入手した宮崎県の農業センサス集落カードデータと、口蹄疫発生時の消毒ポイントや埋却地の位置情報を組み合わせ、発生時の即時対応をせまられる防疫措置に有効な防疫マップの在り方を検証するため、GISソフトを導入する。
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