本研究は、家畜の伝染性疾病に対する実効的なリスク管理体制の構築に向けて、地理空間情報の適切な活用、および畜産経営の感染症リスク管理の実態を明らかにした。国や道府県が整備しているリスク管理用GIS(防疫マップシステム)は、埋却用地の位置情報が結合されておらず、環境リスクの事前評価に未対応であるものの、機能強化が進んでいる。本州有数の畜産地域である栃木県北部では、酪農、肉用牛経営を営む調査経営体の65%が感染症の罹患経験を有し、大規模経営を中心に衛生管理基準が遵守されているが、車両消毒と導入牛の隔離の徹底に課題を残す。
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