本研究は,グローバルな有機農産物流通において導入が活発化している有機認証制度が,水産養殖地域に与える影響を明らかにした.有機認証制度では,環境負荷が少ない生産方法や公正な労働環境を,製品の「品質」として保証しようとする制度であり,生産と環境持続性の関係は自明ではなく,欧米の小売チェーンや資材サプライヤー,加工企業,生産者などさまざまな部門の交渉によって決定される.メコンデルタのナマズ養殖の事例ではこれら環境認証制度の導入は,加工企業が小規模養殖農家との取引をやめて,自社の養殖池を経営し,生産を統合する動きを加速させたといえる.
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