研究課題/領域番号 |
23520950
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米家 泰作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10315864)
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キーワード | 東北アジア / コロニアル・ツーリズム / 心象地理 / 旅行記 / 朝鮮 / 満洲 |
研究概要 |
当初の予定では,昨平成23年度中に近代日本における東北アジア旅行記目録を作成し,データベース化した上で,その旅程の分析を行うこととしていた。しかしながら,近年の国会図書館などの文献検索システムが飛躍的に向上し,従来注目されていなかった旅行記が予想以上に夥しく存在していることが判明した。その結果,資料の閲覧・収集に当初の予想以上の時間を要したため,本平成24年度においても上記の旅行記目録の作成・データベース化作業を継続しており,本年度に予定していた心象地理の分析は個別の資料に即して進めているにすぎない。年度末の時点で,約300点の旅行記の閲覧を済ませているが,所在が判明していながら閲覧できていない旅行記が,なお100~150点程度は見込まれる。 以上の状況は,本研究がねらいとした通り,近代日本における東北アジアへの旅行が,実に様々な立場の人々によって為され,単行本のみならず各種雑誌類への紀行掲載の形で様々に表現され,その旅行体験の回覧や共有がはかられていたことを物語っている。旅行の形態は大きくは,一般の団体観光旅行,各種行政機関の調査旅行,各種業界団体の研修旅行,学校による教育的な団体旅行,1名~10名程度の個人旅行の5種に分類できる。ただし,それぞれ全国規模で参加者が集合するケースもあれば,各地の地域社会をベースとし,具体的な背景や問題意識と関わるケースもあった。また旅行記の内容は,団体旅行の計画のままに受動的に現地と関わるケースもあれば,非常に積極的に現地での観察や交流を図り,特定の視点を強く発揮したケースもあった。従って,これまで近代日本における東北アジアへの旅行記に着目した諸研究が,いずれも少数の事例に立脚して検討しているために,東北アジアへのコロニアル・ツーリズムの全容を押さえきれないまま,個別の特徴を指摘するだけにおわっている傾向が強いことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」欄でも触れたように,国会図書館などの文献検索システムが近年飛躍的に向上し,従来注目されていなかった旅行記が夥しく存在していることが判明した。その結果,資料の閲覧・収集に当初の予想以上の時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のベースとなる近代東北アジアの旅行記目録とそのデータベース化が遅れているため,その迅速な完成をはかる。その際,特定の地方や社会を基盤とした読み手の少ない旅行記の閲覧・収集が,重要な課題となる。資料の購入や取り寄せ,および地方の所蔵機関での閲覧を,よりいっそう積極的に進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
「今後の推進方策」蘭で触れたように,資料の購入や取り寄せ,および地方の所蔵機関での閲覧に,重点的に研究費を使用したい。
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