本年度の研究においては,ウズベキスタンを対象として,「テパ」とよばれる丘状を呈する集落遺跡を調査した。あらかじめCORONA衛星写真を調べて遺跡の位置を特定し,現地調査に備えた。現地調査は2013年11月17~25日に行った。 代表者は2000年にもウズベキスタン・サマルカンド周辺の遺跡を調査した。この調査ではCORONA衛星写真で特定した多くの地物が集落遺跡であることを確認した。遺跡には丘状を呈するものや城壁を巡らしたもの,両者を組み合わせたものなどがあった。本調査では2000年の調査で十分調べられなかったカシュカダリヤ地域を中心に丘状遺跡を調査した。具体的にはクシュ・テパ,ヤルポク・テパ,コマイ・テパ,カラ・テパ,オディルマ・テパである。オディルマ・テパを除く各テパは顕著な丘の形状を呈し,周囲が急斜面で頂部が平坦であり,しばしば一段高いシタデル(城砦)を伴った。 代表者が知る限り,タリム盆地などパミール高原以東の中央アジアでは,集落遺跡が丘の形状を呈することはなく,ウズベキスタンのこの地域に丘の形をとる遺跡がなぜこれほど集中的に分布するのか,理由を探索する必要がある。オディルマ・テパは,他のテパと異なり,三重の囲郭から成り,丘の形状を呈さない。ある意味,中国の囲郭都市と類似しており,この特異な事例についてもさらなる検討が必要である。
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