研究課題/領域番号 |
23520953
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
内田 忠賢 奈良女子大学, 研究院(人文科学系), 教授 (00213439)
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キーワード | よさこい / YOSAKOIソーラン / エイサー / 日系人・日系文化 / 文化伝播 / ブラジル / 沖縄 / 現代祝祭 |
研究概要 |
最大の収穫は、ブラジル・サンパウロ市にて「YOSAKOI-SORANブラジル大会」の第10回・記念大会を調査できたことである。日系人の方々のご厚意にて、特別審査員として参与観察データを得ることができた。本調査は、現地邦人紙『ニッケイ新聞』『サンパウロ新聞』にて取り上げられた。ブラジルでの「よさこいYOSAKOI系」の増殖では、国内に100余りの大小のチームが存在するが、高知よさこい祭りではなく、札幌YOSAKOIソーラン祭りが影響しており、サンパウロ市内の数チームが学んだことを他の各チームが間接的に学習するプロセスが見られる。そのため、主に日系人で構成される大多数のチームの踊りは独自色の強いものであった。 また、サンパウロ調査では、沖縄県人会事務局にて、エイサー関係の資料を入手することもできた。 日本国内での調査は、「よさこいYOSAKOI系イベント」では、札幌市・高知市・千葉県内各所・名古屋市・神戸市・奈良市、三重県四日市市にて、また「エイサー系イベント」では、大阪市大正区にて行った。 8月の高知「よさこい全国大会」では、札幌YOSAKOIソーラン祭りとの差異を益々強調する様相を呈する。国内外ともに、高知よさこい系と札幌YOSAKOIソーラン系に、はっきり分かれる傾向がある。昨年度、調査したベトナム・ハノイ市での、非・日系人による「よさこい」が、札幌系ではなく、高知系を強く志向することを、ブラジルでの、日系人による「よさこい」が札幌系であることを考え合わせると、海外では、非・日系人にとっての「よさこい」は高知を範とする一方、日系人による「よさこい」は札幌系である。「よさこい」をめぐる日本風、和風のイメージが、非・日系人と日系人では異なる点が興味深い。また、国内・海外ともに、エイサーは日本風、和風ではなく、沖縄のイメージと重なる点も強調したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度、平成23年度は、当初予定したブラジル調査は諸般の事情にて実施できず、海外でのフィールドは、ベトナム・ハノイのみだった。また、2年目の平成24年度は、ブラジル・サンパウロのみであった。比較対照する海外の情報が、もう少し欲しい。また、海外での各ジャパン・フェスティバル、ジャパン・ウイークでの、よさこいとエイサーに関する情報入手、および現地調査が急がれる。ブラジル調査では、日系文化での位置付けという新しいテーマにも出合うことができた。なお、国内調査では、エイサーに関しては、本拠地の沖縄での現地調査を実施すべきであろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度のブラジル調査では、日系文化での位置付けという新しいテーマにも出合うことができたが、関連図書・論文・資料を精読する段階であり、最終年度での頑張り所となった。平成25年度は、YOSAKOI-SORANブラジル大会の開催地が、過去10年とは異なり、サンパウロではなく、地方都市(マリンガ市)での開催予定であり、新しい変容が楽しみである。なお、国内調査では、よさこいに関しては、過去約20年間の調査研究の継続研究であり順調だが、エイサーに関しては、本土での伝播形態だけでなく、本拠地の沖縄での現地調査を急ぎたい。 本科研での研究テーマは、現代祝祭のグローバル化である。地理学、文化人類学、民俗学、社会学からも注目されるテーマなので、総括およびアウトプットに努力したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
この2年間と同様、よさこいYOSAKOI系イベントおよびエイサーに関する現地調査費、特に海外でのそれに、研究費の多くを投入したい。一方、科研費総額が大きくないので、報告書は簡易製本とし、印刷経費等を安く押さえたい。また、このチャンスに、関連資料や関連図書も充実させて、3年間の成果をまとめたい。 なお、平成23年度のブラジル調査は諸般の事情で取り止めたため、その旅費等が平成24年度に繰り越され、玉突き式に、最終年度に使用できる経費が、当初の予定よりも膨らんだ。しかし、貴重な研究資金であり、このチャンスを生かしたい。
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