本科研では主に、日本と海外における現代祝祭「よさこい」の伝播・展開を調査し、比較する。また、「エイサー」の増殖・展開との比較をも行う。 本年度の実績は次の3点。1)ブラジルでの「よさこい」の展開について、3年目の継続調査を行った。日系社会での「よさこい」ネットワークに参入し、継続調査の手掛かりを得た。2)ブラジル地方都市における日系コミュニティと「よさこい」の関係を現地調査できた。3)日本各地の「よさこい」の伝播・展開を継続調査した。 1)初年度にブラジルでの現地調査ができなかったので、当初の研究期間を4年に延長した。現地調査3年目にして、日系ネットワークに漸く受け入れられた感がある。「よさこい」関連だけでなく、日系社会・日系文化に関する研究に広がる可能性が見えた。 2)平成26年「第12回YOSAKOI-SORANブラジル大会」は前年と同じ地方都市マリンガ市で開催された。サンパウロ市での開催(第1回~第10回)から地方開催へ移った。その背景には、日系人比率が高く、いわゆる「日本文化」を受容し創造する地域社会がある。主に、日系3世、4世の若者たちが「よさこい」を通て、日系社会のネットワークづくりや日本人としてのアイデンテティの再確認を行う。また、彼らが新しい「日本文化」を創造する。一方、「よさこい」には非日系人も参入し、日系の枠に留まらない。 3)日本各地の「よさこい」では、「原点回帰」(当初の高知「よさこい」を目指す動き)と「ハイブリッドな創造」とに分化する。また、「高知系」「札幌系」「独立系」という3方向の動きから、「独立系」が弱くなっている。「よさこい」がオーセンティックな位置を占め始めた。 さて、4年間の科研調査により、先行研究が少ない海外での「よさこい」の伝播・展開、そのメカニズムを解明する手掛かりを得たのは大きな成果だった。また、日本各地の「よさこい」の伝播・展開と比較できた点も意義深い。
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