研究課題/領域番号 |
23520955
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
石丸 哲史 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50223029)
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研究分担者 |
友澤 和夫 広島大学, 文学研究科, 教授 (40227640)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 開業率 / 創業支援基盤 / 日本政策金融公庫 |
研究概要 |
平成23年度は(1)企業開業に関する研究動向の展望、(2)開業率および創業支援基盤に関する情報ソースの検索・データの収集、(3)創業支援基盤に関する予備的分析を軸とした研究を実施した。 (1)では、企業開業に関係した既存研究の動向の整理を行い成果と課題を認識した。開業に関する定量的分析では、開業率を従属変数とし、開業に影響を与えると想定されるものを独立変数として多変量解析を行うものであり、実証的研究としては空間的要素を投入するものは少なく、都道府県単位による単なる分布特性にとどまっている。しかも、開業率変動要素に関する検討においても空間的コンテキストのもとでの説明に乏しいことがわかった。一方、企業単位の定性的分析は多く存在するが、開業プロセスに関する記述に傾斜しており、空間的な情報を抽出しがたい。 (2)では、開業率に関するデータ分析中において日本政策金融公庫総合研究所が実施している「新規開業実態調査」のデータの所在を認識し、本研究において有効であるかどうか利用可能性について検討した。この分析を行うとすると今後「事業所・企業統計調査」データの分析可能性についても検討する必要性が生じ、定量的な分析を控えた。 (3)では、上記(2)の研究を一時的に停止したため、研究の軌道修正を行い、新たな分析として創業基盤に関する予備的分析を行った。この研究は次年度以降実施する予定であったが、日本政策金融公庫総合研究所が調査結果として「新規開業においてインフォーマルな支援が果たす役割」に論及していたこともあったので、創業支援基盤についてある程度把握した方が今後の分析に有用であると判断した。そこで、ウェブページから我が国の創業支援基盤について分析を行い、地域的特性を検討した。その結果、地方圏では公的部門の貢献が大きい一方、大都市圏ではさまざまな支援機会が存在しており、サービス需給が成立するため市場形成がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、わが国における企業開業動向を地域的および時系列的に分析しその時空間の特徴を明らかにするとともに、その背景や地域の創業支援環境を定性的なアプローチによって明らかにするものである。また、この分析を通じて、企業活動の実態と地域的なビジネスサポートとの関係を論じるとともに、地域の創業支援体制のあり方も論究する。そこで、平成23年度はとりわけ、(1)企業開業に関する研究動向の展望、(2)開業率に関する情報ソースの検索・データの収集、(3)企業開業の実態の立地論的・地域論的把握を計画した。 (1)については、できるだけ可能な文献の収集に努め、研究動向や成果を整理しその課題を見いだし、本研究における方向性をある程度明確にしたので目的を達成したといえる。 (2)については、先述のように、開業率に関するデータ分析中において日本政策金融公庫総合研究所が実施している「新規開業実態調査」のデータの所在を認識し、このデータを用いた分析を行うとすると「事業所・企業統計調査」データの分析可能性についても検討する必要性が生じ、定量的な分析を控えた。したがって、目的を達成していない。 このように、上記(2)の研究を一時的に停止したため、研究の軌道修正を行い、新たな分析として創業基盤に関する予備的分析を行った。この研究は次年度以降実施する予定であったが、日本政策金融公庫総合研究所が調査結果として「新規開業においてインフォーマルな支援が果たす役割」に論及していたこともあったので、創業支援基盤についてある程度把握した方が今後の分析に有用であると判断したからである。この成果が結果として(3)の成果にもつながった。 以上のことから、(2)については十分に目的を達成できなかったが、これを補うべく新たな分析を実施し(3)の成果へ貢献したので総合的には「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、(1)企業開業に関する研究動向の展望、(2)開業率に関する情報ソースの検索・データの収集、(3)企業開業の実態の立地論的・地域論的把握を目的としたが、(2)については、先述のように、「新規開業実態調査」という新たなデータの所在を認識し、このデータを用いた分析を行うかどうか慎重な検討が必要となった。詳細な定性的分析にはこのデータが有効であるが、データの入手および返却に関する時間的制約上、より効率的に分析が実施できる時間を確保しなければならない。また、今後「経済センサス」として統合される「事業所・企業統計調査」データの分析可能性についても検討する必要性が生じたため、定量的な分析を控えた。したがって、次年度はこのことをまず解決すべく研究に着手し、当初予定している研究計画を遂行する。 なお、当初計画していた次年度計画では、企業開業の全体像の把握および創業支援にかかわる地域環境の把握としているが、上記データ分析によって次年度実施する研究内容が増加することも予想される。しかし、新規に行ったウェブページから我が国創業支援基盤の分析によって地域的特性をある程度把握したので、このことが次年度の計画である創業支援にかかわる地域環境の把握を円滑に行う上で貢献したと思われる。このように、次年度の計画を一部前倒しして実施したので、大幅な研究従事時間の増加は予想しておらず、次年度以降も計画通り研究を推進することができる。 したがって、次年度では、(1)開業率に関する情報ソースの検索・データの収集と分析と、企業開業の全体像の把握および創業支援にかかわる地域環境の把握に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
先述のように、次年度では、開業率に関する情報ソースの検索・データの収集およびデータ分析に大きく時間を割くことになる。「平成21年経済センサス-基礎調査」とともに今後入手できるであろう「平成24年経済センサス‐活動調査」を用いた分析が成果を伴うように分析方法に十分留意するとともに、日本政策金融公庫総合研究所が実施している「新規開業実態調査」のデータの分析可能性について検討する必要がある。このデータは、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターに日本政策金融公庫総合研究所が寄託しているが、毎年行われているものの調査項目に若干の変動があり、本研究に活用できるデータをまず検索した上で目的に合った加工及び分析が必要とされる。したがって、この作業に研究補助への謝金など分析環境を整えるために多くの費用を想定している。次年度へ研究費を繰り越したのは、この作業のために多くの資金が必要であることが予想されたからである。 一方、創業支援基盤の概観の一部はすでに終えたわけであるので、次年度は個別にかつ具体的に創業支援にかかわる地域環境の把握を行う必要がある。そのため、全国的視野においてその地域的変動やこの地域の特性を把握する旅費が必要となり相当額を計上している。 このように、23年度研究費の一部を繰り越し次年度使用予定額と合算したのは、研究遅滞というよりは、次年度以降の研究を前倒しして行ったものも含め、計画変更に伴うものであり、次年度では研究に従事する時間と所要の費用算出は合理的であり、適切な執行を見込んでいる。
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