最終年度である平成25年度は、①日本政策金融公庫総合研究所実施の「新規開業実態調査」データを使用した分析と②国土縁辺地域における起業家実態把握のためのインタビューを実施した。 ①では、大都市圏を抱える地域においては、市場規模とビジネスチャンスの大きさ、豊富なベンダーとサプライヤー、イノベーターネットワークなど、起業意識を高揚する環境にあり、域外に出る必要ないため、当該地域は「事業機会型起業家」に良好の環境といえる。また、国土縁辺地域に生育した起業家は、開業のための座学や体験を大都市圏に依存しているか、あるいは、大都市圏での就学経験が起業に結びついている可能性が考えられるという分析結果が得られた。一方、国土縁辺地域では、「生計確立型起業家」が卓越しており、起業に対する動機付け、ビジネス環境が不十分であるため域外脱出するしかないものと考えられる。この背景には、家庭の事情(親の介護、子どもの教育)、望郷の念によるUターンの存在が考えられる。一方、資金調達面ではさまざまな創業支援があり、ほとんどの開業行動に際して問題ないのではないかと思われる。 以上の結果は、調査データの定量的把握から考察したものであるので、この考察を定性的にも実証的に明らかにするため、②では、創業基盤の上で課題を抱えている国土縁辺地域に焦点を当て、公的部門が起業支援の役割を大きく担っているという平成24年度の成果を裏付けながら、沖縄県および北海道の起業家へのインタビューを実施した。その結果、国土縁辺地域においては、資金面や知識・情報提供の面では創業支援の環境は決して悪くないが、市場や原材料調達など、「川上」と「川下」の両面で遠隔地としての不利を抱えていることが判明した。詳細については、9月20~21日開催の日本地理学会および11月9日開催の人文地理学会で発表する。
|