研究課題/領域番号 |
23520957
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠城 明雄 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00243866)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 軍都 / 建造環境 / 場所の政治 / 空間の生産 |
研究概要 |
国立国会図書館などにおいて、日清・日露戦争期の仙台市における軍隊と地域住民の動向を明らかにするため、『奥羽日日新聞』と『河北新報』の記事情報を収集した。その結果、凱旋部隊を歓迎するための地域社会のさまざまな試みが明らかになった一方で、必ずしもすべての市民がそれに熱狂していたわけでなかった点も明らかになった。特に日清戦争後は、軍隊の移動によってコレラが全国的に拡散したこともあって、軍が地域社会にもたらした負の側面が大きかった。 広島県立文書館において、広島市と呉市における軍と都市社会の関係を明らかにするため、新聞記事などを中心に資料収集を行った。その結果、軍に基盤を置く地域経済の構造から工業都市への脱皮を目指す動きがあったことや、それが結局はうまく成功せず、大正期の市の政治構造に混乱が生じたことなどが明らかとなった。 北九州公文書館において、明治期の小倉市の市会議事録の内容について調査を実施した。現在内容の詳細については検討中であるが、広島市と同様に、軍に依存した経済構造から工業都市を志向する構想があったことなどが明らかとなった。 長崎県立図書館などにおいて、佐世保市の大正期における都市社会事業とそれをめぐる政治過程について調査を行った。特にし尿処理に関して、市営事業化をめぐって都市社会の衛生管理が重要な問題であったことが明らかとなった。 近年のフランス語圏とアングロサクソン圏における都市社会地理学の認識論と方法論の整理と検討を行った。その結果、民衆の集合的行動による空間の再領有や場所の意味づけをめぐる対立などに関する議論が高まっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで研究を進めてきた小倉市と仙台市に関して、明治期から大正期における軍と地域社会の関係、および建造環境の生産などについて、具体的な事例を収集し、分析することができた。その一方で、佐世保市については関連資料が少ないこともあり、分析が若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
軍隊の地域社会に対する影響が高まったと考えられる、大正後期から昭和戦前期に時期を移動して、小倉市、仙台市、佐世保市、広島市の軍都としての特徴の変化や都市間競争を明らかにするため、地域資料、議事録、新聞記事などの諸資料を収集、分析する方針である。 また都市にかかわる社会地理学の研究動向やその視点についても、継続して研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料調査として、仙台市と東京都(2回)、広島市と長崎市(3回)をそれぞれ予定している。また社会地理学関係図書についても必要なものを購入する。
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