研究課題/領域番号 |
23520957
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠城 明雄 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00243866)
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キーワード | 軍都 / 建造環境 / 場所の政治 / 空間の生産 |
研究概要 |
本年度も昨年度からの継続課題として、日清・日露戦争期の仙台市における軍隊と地域社会の動向を明らかにするため、日清戦争後に蔓延した伝染病(コレラと天然痘)の流行の実態とその後の行政による衛生対策に関する資料調査を実施した。国立国会図書館などにおいて、『奥羽日日新聞』と『東北新聞』の関係記事を収集し、その分析を行った。その結果、①コレラ対策として地域に衛生組合が結成されたものの、その後衛生組合は行政が考えたような機能を発揮しなかったこと、②伝染病院の建設も地域住民の反対から二転三転したこと、などが明らかとなった。これは、当該期の仙台市における地域住民、行政、軍隊の関係を考えうる上で重要な論点となると考えられる。また、数回発生した米価高騰に対する行政と地域有力者の対応についても資料収集と分析を行い、社会事業が本格化する前の貧困層対策と地域秩序の維持の実態が明らかとなった。 広島市と呉市を対象に、第一次世界前後の軍隊と地域社会の動向を明らかにするため、広島県立公文書館において資料収集を実施した。先行研究では、公設市場の設置をめぐって商工業者から反対運動が起こる実態が指摘されてきたが、軍隊の購買部などがありながらも、広島市でそうした運動が見られないことが明らかとなった。この点をさらに検討することで、広島市の都市社会構造をより具体的に分析する手がかりを得ることができるように思われる。 近年のドイツ語圏における社会理論や都市地理学の研究動向について整理と検討を行った。その結果、都市空間の生産・再生産をめぐる紛争や都市社会運動などに関する議論が盛んになっていることが明らかとなった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から継続して研究を進めてきた仙台市と広島市に関して、明治期から大正期における軍隊の地域社会における位置および機能について、特に建造環境をめぐる都市政治や社会政策という視点から、資料の収集を行い、分析することができた。一方、佐世保市については資料が少ないこともあって、同様の視点からの分析が遅れているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
広島市、小倉市、佐世保市に関して、1920年代以降の「軍都」の社会・空間変容と民衆行動などについて分析するため、これまでと同様に地元新聞記事の検索とコピーや議会議事録の検討などを進めていく予定である。 また都市に関わる英仏独語圏の社会地理学研究の動向に関しても、継続してその問題構制の特徴などの研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料調査として、国立国会図書館(2回)、仙台市(1回)、広島市(3回)、長崎市と佐世保市(3回)をそれぞれ予定している。また都市地理学と社会地理学、日本近代都市史関係の書籍についても必要なものを購入する。
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