研究課題/領域番号 |
23520961
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山崎 孝史 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (10230400)
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キーワード | 沖縄 / 場所 / 軍事化 / 政治地理学 |
研究概要 |
平成25年度計画では調査地を北谷町としていたが、実際には前年に引き続き金武町、そして26年度の調査予定地読谷村での調査も実施した。北谷町では、戦略的な商業地開発について、復帰後の町行政を担当した町職員、長年にわたって町議会を取りまとめてきた町議会議長(保守系)、町政を刷新すべく立候補した若手町議員、基地跡地利用に重要な役割を果たす町地主会、嘉手納基地騒音問題に取り組んできた元自治会長に対して、数次にわたる聞き取り調査を実施したほか、住民の投票行動を把握すべく選挙管理委員会で自治区別投票率のデータを収集した。 金武町では金武町教育委員会において金武町史編纂における基地問題の扱い方、金武町伊芸区における字誌編纂の過程を把握するべく現地調査を行った。 さらに読谷村では、村独自の「平和行政」の施策についてその確立に尽力した村職員に聞き取りを行い、その職員が主導した新行政区の平和行政施策への取り込みの過程に関する調査の準備に入った。 これら調査はまだ進行中であるが、本研究の当初の予想通り、基地返還を進める中部の町村では、安定した革新町村政のもとに、着実に基地返還を進め、立地条件と基地の残存形態に即した(産業開発を進む)再開発に成功しており、町村の政治構造もそうした施策を維持する方向でやや固定化されていることが確認された。 対して、北部の金武町では町史・字誌編纂といった文化行政に、潤沢な予算が投入されていると考えられ、その財源も多くは軍用地料であると推定されることから、それが町史・字誌の記述内容にどのように影響しているかを明らかにしようとした。基地被害の大きい金武町伊芸区では最近基地問題に特化した字誌の別冊を刊行しており、26年度に編集責任者である元区長に聞き取りを実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は若干研究が遅れ気味であったが、25年度は沖縄島各地で調査を実施し、各地で重要なインフォーマントに聞き取りを行うことによって、研究課題を明らかにしうる情報を収集することができた。やや広域的なデータの収集が不足しているが、26年度に重点的に収集し、各地域の現状を明らかにしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は読谷村における調査を重点的に行うが、その具体的課題は読谷補助飛行場他を含む基地の返還を勝ち取り、内発的発展論に基づく跡地利用を進めるのみならず、中南部から移入する新住民に対してもコミュニティ形成を通して「平和行政」への理解と積極的関与を引き出している。その過程を特定の集落を事例に跡付け、基地なき村の自立への道程を展望する。 そして4年間にわたる研究の成果を取りまとめ、学会誌等で公刊するとともに、自治体史誌事業への参画を通して地元にも研究成果を還元していく。
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