本研究の目的は過疎地域の過疎対策事業としてのソフト施策の実態をできるだけ多く調査し、その実効性を考えるところにある。平成25年度は、和歌山県田辺市ほか3町村、北海道白糠町ほか3町、石川県珠洲市、島根県江津市、群馬県みなかみ町、静岡県浜松市、長崎県対馬市の現地調査を行うことができた。23年度からの3年間の現地調査は計36市町村に上り、これは申請時の予定を大幅に上回る結果となったが、これが可能になったのは、近隣の複数の市町村を2~3泊の行程で訪れたこと、現地機関の配慮によってレンタカーのいらないケースがかなりあったこと、そして同行の補助員が謝金を辞退したこと等によって、より多くの調査旅費の使用が可能になったことによる。 23年度は過疎法改正の翌年とあって、一般的には新しいソフト事業の立案が必ずしも活発ではなかった。しかしその中にあって、大分県豊後大野市の新しい公共交通体系の構築、島根県奥出雲町の高齢者のためのTV電話の導入、北海道喜茂別町のコミュニティデマンドタクシーの導入、徳島県佐那河内村の村づくり住民会議の費用の計上、産業振興では島根県江津市の中小企業競争力強化支援事業とコミニュティビジネス創業支援事業等が法改正の趣旨に副う新規事業として実施されているのが注目される。 24年度以降になると、従来から行われてきた高齢者福祉、障害者福祉、子供の医療費の無償化等が多くの市町村で過疎債に転化されているのに加えて、長崎県対馬市の対馬観光リニューアル事業や「わがまち元気創出」支援事業などのように、地域の活性化に向けたソフト事業が新たに各地で生まれていることが、25年度の調査によって明らかになった。ソフト事業への過疎債の充当が、次第にオリジナルな事業の立案が増える形で推移していることを確認することができた。
|