本研究は,有効な解決策を見いだせない日本の低出生力化(いわゆる少子化)について,出生力の地域分析、特に従来分析のあまり行われなかった地方都市の出生力分析を行うことによって,よりよい結果をもたらすことを目的としている。方法としては主に国勢調査による1970年以降の出生力低下の人口学的要素分析を行い,低下過程での出生力要素の変動とその地域性を明らかにした。第二にその結果を利用しながら,地方都市の一例として柏崎市の実態調査によって,その地域なりの低出生力化,特に結婚率の低下と夫婦出生力の水準とその要因をあきらかにした。 最終年度の平成25年度は前年度に行った郵送によるアンケート調査の整理およびその補充のために事例調査を行った。それらの結果をもとに地方都市柏崎市の未婚者の結婚と既婚者の出生力の特徴とその要因分析を行った。分析結果の概要は下記のようになる。 柏崎市では、全国平均より高い結婚率(低下が著しいが)と有配偶出生力がみられた。その理由として、全国平均に比べて、正規雇用の割合が高いこと、子供や結婚に関して比較的積極的な考え方があること、親との同居割合が高いこと等が重要である。夫婦についてみた場合、次代に置き換わる以上の比較的高い出生力を維持している。現在、東京などの大都市圏は全国人口の半分を占めるが、出生力が著しく低いために将来日本全体の人口を大きく減少させる主役となっている。日本人口の4分の1弱を占める地方中小都市の相対的に高い出生力は日本の出生力維持・回復にとって重要である。 調査では、柏崎のような都市に住みたいという希望は未婚者および既婚者とも約半数であり、また、他地域で大学等進学しても戻る人々が一定程度いる。しかし、現実には若年人口は絶対的に減少している傾向は変わっていない。このまま若年人口が減少していくと、相対的に高い出生力を維持できなくなることは確実であろう。
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