研究課題/領域番号 |
23520971
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研究機関 | 東亜大学 |
研究代表者 |
礒永 和貴 東亜大学, 人間科学部, 准教授 (10201922)
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研究分担者 |
鳴海 邦匡 甲南大学, 文学部, 准教授 (00420414)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 韓国 |
研究概要 |
本年度の研究では、官撰絵図の年表作りに力を入れた。各藩政文書の所蔵機関のホームページ及び既存の目録などによりながら年表を作成した。萩藩と熊本藩については、すでにホームページにアップをした。 特に注意した点は、藩による絵図作成のプロセスと現存する絵図との関係である。その結果として、官撰絵図の作成は、藩自体が近世を通じて組織的に行った場合と当初藩が主体であったが、後に地方行政機関、さらには農民へと展開した場合の2ケースがあることが判ってきた。 また、一般的に絵図の作成技術は、手描きの絵図から測量図へと展開したと考えられてきたが、すでに江戸前期から手描きの絵図ばかりでなく、測量図も作成されたことも明らかになりつつある。 さらに、全国の主な官撰絵図所蔵機関のリストを作成し、連絡をとって協力体制の構築を行っている。特に九州・中国地方の各所蔵機関とは密に連絡をとり、実際に閲覧・調査を実施した。その結果、熊本県立図書館では、これまで実物の存在が不明であった熊本藩最古の肥後国絵図をはじめとする多くの絵図を発見した。さらに熊本大学附属図書館寄託の永青文庫文庫においても正保肥後国絵図の測量図の下図と考えられるものを発見した。 これらの成果については、熊本大学で発表を行った。また、太宰府市においても官撰国絵図や近世絵図についての講演と論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
九州・中国地方における官撰絵図の年表ができ、おおきな歴史的な流れを把握できたのは大きな成果であった。特に、近世期を通じて官撰絵図の作成が藩を中心に行われて広がりを見せない場合と藩から地方行政機関さらには農民へと広がりを見せた違いはこれまでにあまり解明されていない。また、さまざまな機関との連携をとることができる素地ができたことも大きな成果である。さらに、今まで行方知れずとなっていた絵図や新たな絵図を発見できたことも大きな成果となった。 しかしながら、当初の計画では全国の官撰絵図の把握を行うつもりであったが残念ながら、九州・中国地方にとどまったことが残念である。また、一部の絵図については、写真撮影が実施でき、具体的な研究を行うことができる体制ができたが。残念ながら発見したものの写真撮影が実施できてないものもあり、今後の課題である。 さらに、これらの研究成果について、インターネットで公開したり、報告を一部で行ったりしたが、まだ十分とはいえない。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の研究は官撰絵図の年表の作成を完成させることにあったが、未だに不十分であり継続して作成を実施する。特に近畿地方や関東地方などに力を入れて、その地域的差異を明らかにすることを推進したい。また、これまでに撮影した絵図を具体的に解読し、その内容を明らかにすることも大きな課題である。 特に、肥後藩と萩藩はまったく異なる官撰絵図の作成史を構築しており、比較対象として好適である。両者の比較を通じてそれぞれの特徴が明らかになれば、その典型例として示すことができよう。また、具体的な測量家の実態や実際に作成した絵図の発見についてもつとめていく。 また、両藩の特徴を把握して他藩の例と比較検討することによって、より詳細な官撰絵図の作成の展開が明らかになるものと思われる。本年度はできうるが限り様々な諸機関に出かけ実地調査を実施して実態の把握に心がける一方で、研究成果の発表に力を入れるようにする。また、研究成果をインターネットなどで広く発信するようにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1年目の研究費によって十分な機材を整えることができた。これからは、現地調査を実施することが大きな課題となるので、旅費を充当していきたい。 また、1年目に調査を実施したものの十分に資料整理ができていないものがある。これらを整理することを実施て学会などにおいて発表し、論文化することが求められる。整理の人件費や研究発表に旅費を充当する。 さらに、1年目に新発見した絵図については、写真撮影を実施する一方で、修理などにも行い資料の保存と活用に寄与するよう研究経費を使用する計画である。
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