本研究は、日本近世の官撰絵図史の総合的把握を目的とした。また、日本の官撰絵図の特徴を明らかにするため朝鮮・中国の官撰絵図と比較した。朝鮮・中国の同時期の官撰絵図は地誌書の附図という特徴を持っている。また、中央政府の官撰絵図の作成の技術が地方へと伝播することは少なかった。これに対して日本の江戸幕府は、各藩に官撰絵図の作成を命じたため、藩も独自の絵図を多数作成した。日本の官撰絵図は、簡略に歩数などで距離を測ったり、樹木などを利用して角度求めたりする実測によったいわゆる「実測図」から和算の影響によって測量器具を使う精度の高い「測量図」へと独自の発達を遂げたことが明らかになった。
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