研究課題/領域番号 |
23520974
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
山田 嚴子 弘前大学, 人文学部, 教授 (20344583)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | オシラ神 / 民俗信仰 / 再文脈化 / イタコ / カミサマ / 観光 / 資源 / 博物館 |
研究概要 |
本研究は東北のオシラ神信仰が時代と地域の文脈にあわせて過去とは別の意味を帯びてくる民俗信仰の再文脈化実態とそのメカニズムを明らかにする目的で申請された研究である。 研究開始前に震災が起こり、主な研究協力者3名のうち2名が被災した。1名は被害の大きな地域の博物館学芸員であった。また被災を免れた協力者も文化財レスキューの仕事で多忙を極めた。そのため5回の予定の研究会を3回にして実施した。研究会では、研究協力者は被災地や文化財レスキューなどで見聞したオシラ神の実態について情報提供に勤めた。また、岩手県内の博物館でも、被災地のオシラ神信仰の変動、問題点などの情報が蓄積され、被災の状況も含めたオシラ神信仰のあり方を記録する方向を確認した。 当初の計画では、福島、宮城、岩手、青森、北海道の各地域のオシラ神の記録・研究の蓄積を確認し、オシラ神関連施設を巡見する予定であったが、計画を変更し、青森県、岩手県の資料の確認を急いだ。また、岩手県遠野市の観光施設、博物館、学校といった場所でのオシラ神の活用や、「馬娘婚姻譚」の教材化、博物館が媒介する形で存続するオシラ神信仰のあり方について、研究協力者とともに確認した。このことは岩手県遠野市における、近代以降の「遠野物語」を資源化した後の信仰の実態を明らかにすることにつながる。 青森県弘前市では真言宗寺院が関与する形でのオシラ神調査、特に北海道道南地域からの新しい参拝者の実態調査を行い、信仰基盤のない場所に伝播する信仰のあり方について、データーを蓄積した。また、研究発表から信仰者のライフ・ヒストリーから、信仰の実態に迫る方向を確認した。また、青森県八戸市では長期の調査を行い、高齢化したイタコが関与する伝統的な形でのオシラ講について記録映像を撮影した。これらは、新たに生まれてくる信仰と失われつつある信仰の両方の実態が確認できる資料として位置付ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災の影響で福島県、宮城県での研究会の開催と、信仰実態の確認は延期せざるを得なかった。また、研究協力者の3名は、被災地の博物館に勤務していたり、文化財レスキューに関わったりする中で多忙を極めることになった。そのため、年5回開催予定の研究会の数を減らし、3回実施する形に変更した。3回の研究会では、青森県、岩手県の自らが撮影した映像資料を上映し、映像を用いた分析の方法、映像化の撮影上の問題点、映像化の問題点について議論を重ねた。 実態調査では、研究が可能なところから進めるために、先に、被災を免れた岩手県、青森県、北海道でのオシラ神信仰の記録、研究の蓄積の確認を急いだ。この過程で貴重な映像資料を入手し、既に失われたオシラ神の習俗や、震災と関わるオシラ神信仰の映像を共有することができた。また、岩手県遠野市では、オシラ神信仰の現在の文脈と実態を確認し、映像資料作成のための、過去の映像資料の選択、今後の撮影予定などを確認した。 青森県八戸市のオシラ神信仰については、長期間の調査を実施し、オシラ講の期間中待機することで、高齢化したイタコが関与するオシラ講を撮影することができた。また、かつてイタコが関与していたオシラ講のある集落を訪れ、イタコが関与しなくなった後の儀礼の変化を調査した。北海道道南地方の弘前市岩木山へ参拝する信仰者については、実態調査を行い、記録を撮影を行った。弘前市の真言宗寺院が関与するオシラ講の参詣者の資料、参詣者に実施したアンケートは、アルバイトとともにデーターの入力、整理を進めた。データーから読み取れる大まかな信仰圏については研究会で発表があった。今後、年代別の変化などの細かな分析が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者の状況に鑑み、年5回の予定であった研究会を4回にして開催する。その中で、撮影した映像資料を上映しながら分析を行い、今後の「民俗信仰の再文脈化」の映像資料作成について議論を進める。また、映像作家と研究者を招き、映像資料作成に向けて助言を求める。 福島県のオシラ神信仰については、福島県立博物館への記録確認に行き、研究協力者とともに、映像資料作成のための資料を確認する。 昨年度に引き続き青森県のオシラ神信仰の実態調査をすすめ、記録用映像を撮影する。今年度は三戸郡を中心に調査する。北海道道南地方のオシラ神信仰者については、昨年度の青森県での調査に引き続き、北海道での調査を行う。弘前市の真言宗寺院が関与するオシラ神信仰圏の確認のため、今年度はまだ調査を実施していない秋田県の信仰圏の調査を実施する。 宮城県のオシラ神信仰については、研究協力者の状況を確認した上で、検討に入る。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費としては、年4回の研究会と1回の福島県立博物館への資料調査旅費(2泊3日×6名×5回)が必要である。また、研究会のために映像作家と研究者をそれぞれ1回づつ招聘する(2泊3日×2回×1)北海道への調査旅費(2泊3日×2名×1回)と、青森県南部地方のオシラ講調査(2泊3日×2名×1回)のための旅費、秋田県の信仰圏調査のためのレンタカー借り上げ(5日×2)が必要である。 謝金・アルバイト代としては、調査補助とデータ整理のための費用(5000円×4日×2名)が必要である。物品費としては、調査地の郷土資料、調査報告書などの資料代、撮影機材の整備、電池やMD,SDカ ードなどの消耗品代が必要である。
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