本研究では、オシラ神の置かれている文脈自体の変化を、福島県、宮城県、岩手県、青森県、北海道道南地域をフィールドに明らかにするものであった。調査と研究会の議論の結果、次のような成果を得られた。 ①基礎的なデータの不十分であった福島県においては、1970年代後半から80年代初頭にかけての手書き及び孔版のオシンメイサマ調査資料の提供を受けた。この資料を提供者の同意の下、写真、本文ともにデジタル化した。公表までには、調査者による加筆訂正、被調査者やその遺族の同意、プライヴァシーの処理などの課題を残している。 ②北海道道南地方と青森県津軽地方の「オシラさまを授かる」という現象の分析については、研究代表者の山田嚴子が民俗学会で発表をし、また、昔話学会では「神を授かる」というその他の信仰との類似点、信仰を媒介をする人々について焦点をあてて講演を行った。また、発表の際には、弘前市の真言宗寺院久渡寺の信仰圏のデータ及び、久渡寺でのアンケート調査の結果を活用した。 ③オシラ神が置かれている文脈の変化を、「オシラサマ信仰の『現在』」と題する映像資料として作成した。その際、従来の文脈からの変化を示すオシラサマの映像と、従来の信仰から離れ、新たな現象として生じてきたオシラサマの映像を分け、二部構成とした。第一部を「オシラサマ信仰の諸相」とし、研究代表者の山田嚴子と研究分担者の川島秀一が作成し、第二部を「オシラサマ信仰の展開」とし、研究協力者の前川さおりが作成した。第二部では、岩手県遠野市のオシラサマを活用した教育や観光での取り組みが紹介されている。
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