研究課題
2013年7月~10月にフランスにおいてマダガスカルの植民地化期の法制資料を閲覧すると共に、マダガスカル北西部の村落において現行の取り決めとその運用に関する臨地調査を行った。また、2014年2月~3月は、マダガスカル北西部の町マジュンガにおいて現行の末端地域行政区における治安維持および<人民裁判>と呼ばれる非合法ではあるものの、警察や憲兵隊も不介入の住民たちによる犯罪容疑者の処罰についての聞き取り調査を行った。(1)マダガスカル北西部地方の村落における現行の国家レベルの法と慣習法は、19世紀のイメリナ王国支配、19世紀末からのフランス植民地支配、1972年以降の国家による地域行政区分に関する法令、三つの歴史的相を通じて形成されてきた。植物毒を用いた試罪の習慣は19世紀初期のイメリナ王国支配に淵源するものと推測される一方、フクヌルナと呼ばれる村落統治制度はイメリナ王国時代に北西部地方に導入され、フランス植民地時代に公共労働奉仕制度や徴税制度・徴兵制度などを通じて確立され、さらに1972年以降の社会主義化政策によって強化された蓋然性が高い。(2)北西部の村落における慣習法的秩序の形成は、村の集会や共同作業への参加経験の積み重ねだけではなく、幼少期よりの牛牧畜や刃物の取り扱いや喧嘩の様式を経て身体化されている。(3)北西部の大都市マジュンガおよび農村部においては、<人民裁判>と呼ばれる地区住民などによる非合法な犯罪容疑者の処罰が行われている。しかしながら、この処罰に対し、警察や憲兵隊は処罰された容疑者がマダガスカル国民である限り、原則不介入の対応をとっている。その根底には、北西部地方における村落を単位とした人びとの上記の三つの歴史的相を通して形成された秩序意識に対する、警察や憲兵隊に属する人間自身の追認ないし共感が存在する。
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Culture(s), Creation et Identites: Un Regard Anthropologique Pluriel
巻: 1 ページ: 85-127