研究課題/領域番号 |
23520986
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
湯川 洋司 山口大学, 人文学部, 教授 (10166853)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 民俗学 / 山村社会 / 自律性 / 五木村 / 只見町 |
研究概要 |
本研究は、日本の山村史上、人口が最も増大した1960年代と、その後の過疎化と高齢化の進行により「限界集落」化した2000年代の山村社会とを、熊本県五木村(日本の南の山村)と福島県只見町布沢地区(日本の北の山村)を対象地として、独自に設定する比較指標と各時代相との照合を通じて相互に比較し、山村の存立と持続に必要となる「自律性」とその確保のための条件を解析・抽出しようとするものである。初年次に当たる平成23年度においては、比較指標の設定を目指して、(1)これまでに収集した関係資料の読み込みと分析、(2)関係資料の追加収集(現地調査)を次のように実施した。 (1)資料の読み込み・分析:五木村関係では、村教育委員会調査による「五木村の文化財調査」、村役場発行『五木村誌』・『五木の民俗』、五木村総合学術調査団編『五木村学術調査・人文編』等を、只見町関係では、『只見町史・民俗編』、会津民俗研究会による『奥会津只見町過疎部落の民俗』、『会津の民俗』(合本第1集・第2集)、町教育委員会による「年中行事アンケート資料」等を対象に行った。 (2)現地調査の実施:かつての食料自給的な生活における自立性を検討することに力点を置き、五木村では、かつての焼畑農耕と雑穀栽培、食料備蓄の方法等を、只見町ではかつての食料確保の実情と食料備蓄、戦後以降の賃稼ぎの展開に関する聞書きを実施した。また、五木村の焼畑関係用具を多数収蔵する熊本市立博物館において、博物館の協力を得て関係資料を調査した。 (3)比較指標の設定:五木村と只見町に関し、上記の資料収集・分析を踏まえて、食料確保を軸にした経済的生活面に関する比較指標(案)を得た。ただし、社会生活、信仰生活については不十分であり、引き続き検討を進める。 (4)成果発表:五木村と只見町を対象にした論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に従い実施し、文献等の資料の読込み・分析、現地調査による資料収集、それらに基づく比較指標の設定と、ほぼ当初の見込み通りに行うことができた。ただ、比較指標の設定は必ずしも十分ではなく、さらに検討を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画を大きく変更する必要性はなく、比較指標の設定を引き続き行ったうえで、24年度においては五木村、25年度においては只見町の現地調査に集中的に当ることにする。 26年度においては、調査研究の報告のとりまとめを行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として、熊本県五木村における実地調査(資料収集)を集中的に実施する。併せて、福島県只見町の調査も実施し、相互の比較資料の収集を進める。このため、研究費の多くの部分を旅費が占める。 前年度の未使用額は書籍購入予定費が残ったものであり、これは次年度の書籍購入費に組み入れて使用する。
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