平成26年度は、これまでの実施してきた研究の成果報告として、5月15から18日にかけて開催された国際学会(IUAES 国際人類学民族科学連合と日本文化人類学会50周年記念国際研究大会)において英語による口頭発表をおこなった。 また、研究調査として、次の調査をおこなった。①沖縄県におけるシマクトゥバ復興の実態調査。本年度は、とくにメディアとシマクトゥバの復興、ならびに年齢層におけるシマクトゥバの復興の実態に着目した。すでに、ヴァナキュラー(土着の日常言語)としてその機能が低下しているシマクトゥバであるが、さまざまな現場で、復興の兆しがある。たとえば、老人介護施設やデイ・サービスではシマクトゥバの利用がが重要視されている。また、若者が対象のお笑いタレントの中にも、シマクトゥバの復興に寄与している方もいる。本年度は、大城純(ジュン選手)とインタビューをおこなうことができた。②アイヌ民族のアイデンティティ形成における言語の位置に関する実態調査。アイヌ語がヴァナキュラーの位置を失い長い時間が経過している。アイヌ活動家の多くは、「アイヌへの回帰」ということばで、アイヌ文化の学び直しを語っている。ポスト・ヴァナキュラーという視点からいえば、ヴァナキュラーに内在する意思疎通の手段ではなく、アイヌであることを示すバッジという象徴的意味を担っていることが判明した。たとえば、(女性の)手仕事である刺繍家たちが、自らのアイヌとしてのアイデンティティの証として、アイヌ語表現を利用している状況が数多くあった。本年度の調査結果として、程度の差はあるものの、シマクトゥバもアイヌ語もヴァナキュラー語をモデルとして考えたとき崩壊の危機にあるといえるが、ポストヴァナキュラー的視点からすれば、言語の新しい機能が生まれつつあることが確認できた。
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