本研究は、主にタイのダイビング観光業者への参与的観察によって、以下のことを明らかにした。 ダイビング業界では、観光客に対して事故リスクの軽減手段を販売するという、事故リスクの資源化が中心的な職業実践となっている。また事故リスク(の管理)は、短期的な売り上げの大小に関わる問題だが、生態リスクは、遙かに長期的なスパンで考える事象である。このような、考慮すべきリスクの、深刻度・重要性および時間スパンの違いが、ダイビング・ガイドたちによるリスク対応への優先度の違いを生んでいる。つまり、ダイビング・ガイドたちが、長期的な生態リスクよりもより短期的なリスク管理に注力せざるを得ない、構造的な理由が存在する。
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