研究課題/領域番号 |
23520996
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研究機関 | 江戸川大学 |
研究代表者 |
阿南 透 江戸川大学, 社会学部, 教授 (50255204)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 祭礼 / 暴力 / 喧嘩祭 / 日常と非日常 / 自粛 |
研究概要 |
平成23年度は、研究代表者および連携研究者が分担して、福野夜高祭、伏木けんか山、砺波夜高祭、築地だんじり祭りについて初調査を行った。また、補足調査を行って祭礼の全体像を把握することに努めるとともに、現地の祭礼関係者、行政、地元研究者等と交流を深めた。そして次年度以降の調査計画を立案した。 それとともに、研究代表者および連携研究者がこれまで研究を重ねてきた青森ねぶた祭、角館のお祭り、森の祭り、見付天神裸祭、くらやみ祭(府中大國魂神社)について、「暴力」に焦点を絞った調査を継続した。また、東日本大震災の影響を受け、くらやみ祭をはじめとする東京の祭りが中止になったことから、暴力の裏返しともいえる「自粛」についても資料を収集し、調査を行った。さらに、こうした成果を共有するための研究会を3回開催した。また、日本民俗学会第63回年会に参加し、最先端の研究動向を収集して、理論的考察の開始に備えた。 これらの調査の成果として、個別の祭礼における「暴力」とそれを制御する仕組みについて、理解を深めることができた。また、調査地域の周辺には類似した祭礼がさらに存在することが判明したため、次年度以降の調査に組み込むことにした。このことは、研究の広がりとさらなる知見を得られる可能性をもたらすものである。 成果として、連携研究者の中里亮平が、平成23年のくらやみ祭が東日本大震災の影響で中止になったことを中心に、首都圏において「自粛」と「暴力の抑制」が拡大していった状況を、日本民俗学会第63回年会において発表した。また連携研究者の谷部真吾が、見付天神裸祭の「暴力」の変化を扱った論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで研究を重ねてきた祭礼はもちろんであるが、23年度から調査を開始した祭礼についても、関係者との信頼関係を構築し、祭礼の全体像を把握するなど、事前に予定したとおりの成果を上げることができた。そして、当該の祭礼を「暴力」という観点から分析するために必要な資料をある程度収集することができた。 また、平成23年は東日本大震災によって各地の祭礼が「自粛」したが、この現象を、「暴力」の裏返しの現象ととらえることで、「暴力」の在り方を浮き彫りにするという視点を得ることができた。 さらに、周辺地域に関連した祭礼を発見することができ、研究のさらなる広がりの端緒を見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初予定した通りに進行している。そこで、23年度に引き続き9つの祭礼の調査を行う。また、昨年度の調査で、周辺に関連する祭礼が存在することがわかり、津沢行燈祭、祈念穀祭(富山県南砺市高祖神社)、貴船だんじり祭等について追加調査の必要性が認められた。そこでこれらの祭礼についても調査を開始する。さらに、日本民俗学会、日本文化人類学会等の関連学会に出席し、現在の研究動向の収集に努める。 こうして得られた成果を、研究会の開催によりメンバーが共有し、理論的考察を深める。それとともに、個別の成果を学会で発表し、また個別の研究論文を執筆する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は平成26年度までの4年計画で補助を受けているが、2年目にあたる次年度は、予定した研究費については当初の計画どおり支出する予定である。 なお、平成23年度の研究費に残金があるが、これは、東日本大震災の影響で各地の祭礼が「自粛」になり、調査規模を縮小したこと、当初予定した調査地の周辺に類似した祭礼の存在が明らかになったため、24・25年度に追加調査を実施すべく、23年度の支出を節約したことによるものである。この残金を今年度の旅費に追加する予定である。
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