本研究は、カンボジア仏教界でおそらく初めて登場した「論蔵学(以下アビダンマと記述)を修め、教鞭をとる」俗人女性修行者(ドーンチー)2名に着目し、以下の調査を実施した。(1)カンボジアの俗人修行者の寺院生活に関する基礎調査、(2)上記2人が1990年代に教学のために滞在したタイでの経験を含むライフヒストリー・データの収集、(3)タイ、カンボジア両国におけるアビダンマ学習の実態調査、そして(4)2012年に行われた「ドーンチー研修」の参与観察を行った。その結果、上座仏教徒社会における出家/在家境界およびジェンダー秩序に生じつつある新たなダイナミズムの一端を明らかにすることができた。
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