本研究は、越境公共圏において形成される、多元的かつオルターナティブな市民権概念について解明するために、ネパール人移民により進められている多重市民権法制化運動に焦点を当てた。その結果、以下のことが解明された。①多重市民権の法制化をめぐる交渉は、ネパールの脱領土的国民国家への変容をさらに進めつつある。②脱領土的国民国家の経済的境界線と政治的境界線はずれている。③運動はネパール市民権を再構築しつつある。ネパール市民権と居住国などの市民権/国籍は、ネパールの発展のために異なる役割を果たす相補的市民権として再定義されている。
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