研究課題/領域番号 |
23520999
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
山本 真鳥 法政大学, 経済学部, 教授 (20174815)
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キーワード | 国際研究者交流 / サモア:トンガ:ニュージーランド / 文化人類学 / 互酬性 / トランスナショナリズム / グローバリゼーション / 移民 / 文化政策 |
研究概要 |
サモア社会の儀礼交換を中心とする互酬経済は、20世紀後半の市場経済の進展に伴い、変容を遂げつつエスカレートしてきているが、さらに2003年頃に始まる、政府による女性の伝統的な仕事の見直し、儀礼交換縮小および伝統回帰の政策介入があって、大きな転機を迎えている。23年度に引き続き、3回の海外フィールドワークを重ねて、さらにデータを集めることができた。 6月1日にサモア独立国の独立50周年式典が開催され、その行事をめぐる人々の行動を観察し、意見を聴取するために1週間のフィールドワークを行った。サモア人アイデンティティとして重要なファインマット(しかも貴重な大変目のつんだ細かい上質なもの)が、国賓に1枚ずつ贈呈され、国家的な評価を得ていることがわかった。 8月下旬より3週間、サモア独立国の隣国トンガでフィールドワークを行った。トンガでは様々な種類のマット類、樹皮布類を女性たちが生産しているにもかかわらず、サモアのファインマットは最高級品として需要があり人気が高い。サモアではもっぱら互酬的な贈り物として利用されているのに対し、トンガでは家宝として長く家に留め置かれるという違いがある。一方、交換財の生産も重要であるが、土産物の生産が大層盛んであり創作品は意欲的である。トンガからの帰路、ウェリントンのテ・パパ博物館の収蔵品のファインマットを見せてもらった。古いマットにもかなり大きいものがあった。 2月下旬より3週間弱、オークランドにて、サモア移民やトンガ移民の間でのファインマットや交換財に関するデータ収集を行った。ニュージーランド国内での太平洋諸島民のアート活動は以前に比べてやや下火の印象を受けたが、一方でコミュニティ内、とりわけトンガ人コミュニティ内では、マット類や樹皮布は大きな需要があり、本国から絶えず供給されていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロジェクト開始以前の過去において情報をかなりもち、全体としてどのようなことが行われているかについて、概要をつかんでいるために、全体が見えており、論文や著書の構想も立っているという点では概ね予定通りに進んでいるといえるが、フィールドワーク後のデータ整理がやや不十分である。きちんとしたエヴィデンスの積み上げが重要であるという点において、反省しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
4月から7月に欠けては、不足している資料整理とその分析に費やし、英文論文草稿をしあげる。 8月にはマンチェスターで開催される国際人類民族科学会議に出席の予定(法政大学の学会参加費助成を受ける)であり、ここで論文を発表する。提出済みのアブストラクトのタイトルは、'Globalized Reciprocity: Development of Fine Mat Exchange in Samoan Transnationalism'であり、既にアクセプトされている。英文論文は発表を経て8月後半から9月半ばにかけてさらに推敲し、雑誌論文として投稿の予定。 9月半ばからは、これまでの儀礼交換とファインマットに関する論文を集めた論文集をまとめる。論文集の最後の2章は書き下ろしとなり、この科研費調査のデータを元にして執筆する。 2月に2週間ほど、再度サモア独立国を訪問して最終的なデータのチェックを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(単位 千円) 物品費 70 (書籍 20: 記憶媒体・文具等 50) 旅費 540 (海外滞在費 320: 航空運賃 220) 人件費・謝金 200 (資料整理アルバイト 130: 英文校閲 70) その他 90 (資料取り寄せ費 30: 郵便費・送料 30: 印刷・製本 30)
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