本研究は、高度経済成長期以前におこなわれていた水田稲作の民俗技術が現代とくに1990年代以降になって復活してくる経緯とその歴史民俗的な意義を探ることを目的とする。具体的には、伝統農法とされる「冬水たんぼ」と「コイ農法」、また赤米栽培とそれをめぐる神社祭祀に注目した。それぞれにおいて文化資源化されるときの特徴を描くとともに、水田稲作をめぐる民俗技術の場合にはワイズ・ユースやサステイナビリティーといった環境思想が文化資源化にとって大きな役割を果たすこと、また一方で文化資源化の過程には伝統の粉飾や歴史の捏造といった負の要素も存在することを明らかにした。
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