モノとしての聖具は、生産、流通、消費の各側面において、稀少な真正品に価値をおくのではなく大量生産による模倣品の受容が前提となったシステムが成立している。そのような大量消費の主要な場となるのが都市祭礼におけるパフォーマンスと形象化であり、ここにおいては無数の模倣品が個々の所有者のそれぞれの文脈にしたがって多様に宗教的消費される。さらにその下支えとなるのは、聖像をめぐる不思議な話(奇蹟譚)という宗教知識のテキスト化である。聖像がモノとして個々人のお気に入りに装飾されるのと同様に、奇蹟譚において知識の面でカスタマイズされることを通して、真正品として消費されるのである。
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