研究課題/領域番号 |
23521006
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
橘 健一 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (30401425)
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研究分担者 |
渡辺 和之 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (40469185)
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キーワード | 国際研究者交流 / ネパール / 民族 / 動物 / 認識 |
研究概要 |
本研究は、ネパールの諸民族を対象に、動物認識とその変換のあり方を明らかにすることを目的とし、平成23年度代表者(橘健一)、分担者(渡辺和之)でそれぞれチェパン、グルン社会でフィールド調査を行い、その成果の一部を学会等で発表した。 平成24年度は、代表者はチェパンでの調査を継続しつつ、低地の先住民タルー、カトマンズ盆地の先住民ネワール社会にフィールド調査を展開、分担者は牧畜・交易民と近隣諸民族社会のフィールド調査を実施した。 その結果、チェパン社会において、生の起源や薬を飲んでも治癒しない病など超自然的な出来事の解釈が、地下世界という空間に原因を求めるものであること、その地下世界の空間にも人間が存在するとされるが、その地下世界の人間は、通常の地上世界の人間とは身体(自然)が異なるとされることを明らかにし、文献研究の成果も踏まえて、そうした解釈的な空間の差異と身体、自然の差異とが関わりを持つことを論じた(学会にて発表)。また、グルン社会において「祖霊の化身としての虫(ナナフシ)」の排除、タルー社会において「狩猟に関わる霊媒的存在(sikari mari)の排除」、ネワール社会において「虫に繋がるような小さな存在(ca)として第三者の排除」があることを見出した(学会等では未発表)。また、分担者は、牧畜交易民の家畜の伝染病に対する認識の問題やヤギとブタの飼育に対する先住民や低カーストの志向の差異といった問題を学会で発表、従来とは異なる動物認識研究の方向性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまで、チェパン社会の動物認識について詳細を明らかにし、併行しておこなってきた動物認識に関わる文献研究の成果も取り込んで、その存在論的なあり方を検討することが出来た点、グルン、タルー、ネワール社会の存在論的な動物認識のあり方についても調査を実施し一定の成果を上げてきた点、さらに牧畜交易民における動物の病や生業上の動物との関わりの志向性についても検討を始めることが出来た点から、研究の目的を順調に進めることが出来ていると評価できる。ただし、社会内部の動物認識の差異の問題、チェパン以外の社会における動物認識の詳細は、未だ十分に検討出来ているとは言えない状況にあるため、今後も継続してフィールド調査を実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
チェパン社会における動物認識の調査を、社会内部の差異にも配慮しつつ継続し、その存在論的なあり方について分析を進める。 チェパン以外の社会における動物認識については、網羅的な把握よりも、これまで見出したような存在論的なあり方に焦点を絞り、その詳細についてまとめ、チェパン社会のものと比較検討のうえ、変換等の関係を分析する。これらについては、国際人類学会、現代インド研究等の国内外の学会、研究会で発表し、論文を執筆する。 また、チェパン社会で見出したようなトラに対する特別な認識は、ネパール国内ではほとんど確認できないものの、インドのナガ等近隣の先住民社会で見られることを文献研究で確認したので、スケジュールや予算等が許せば、フィールド調査を実施し、新たに比較検討に加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き、ネパールを中心に国外でフィールドワークを実施するため、そのための渡航費等の諸費用を中心に研究費を使用する。代表者、分担者ともに国際学会での発表を計画しているため、そのための渡航費等、国内の学会発表のための出張費も使用する計画である。また、研究成果を出版するための費用も使用する予定である。
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