これまで、現地調査と文献調査を中心に研究を進めてきた。現地調査は、沖縄本島と大阪市大正区で模合集会への参加や模合に関するインタビューを中心に行ってきた。 まず、大阪市大正区での調査では、大正区の沖縄系の人びとのコミュニティが、沖縄県人会連合会の活動を中心にまとまっていることがわかった。また連合会は、関西一円の沖縄系の人びとを体育会や新年会などのイベントを通して、一同に集まる機会を作り出していた。そして連合会の中心メンバーは、模合を介して連帯を深めていることが確認された。模合は大正区では「タノモシ」と呼ばれているが、貨幣により親睦を深め、信用を創り出し、ひいてはコミュニティを形成していることが明らかになった。また、「タノモシ」は大正区の大阪人も交えて行われているケースも見られ、模合を通して沖縄系の枠を超えてコミュニティが形成されていることもわかった。 沖縄では、那覇とその周辺の模合が、さまざまな機能を持つことがわかったが、とくに近年活発となっている「親睦模合」では、貨幣のやり取りを通じて友情や信頼をつくり、小さなコミュニティを作り出していることが明らかになった。模合は、沖縄で古くは労働交換を意味し、現在では助け合いを意味するユイマールのあらわれといわれるが、実際に、都市で親睦を目的とする模合においても、集会を離れても、メンバーが困ったときにさまざまな形で助け合いが行われていることがわかった。つまり模合は都市においてもまさにユイマールの組織だったといえる。 一方で、親睦模合の対となる金融目的の金融模合では、金額は大きくなるものの、そこで生まれる信頼も大きくなるとは限らず、むしろ反比例する側面が見られた。もちろん、金融模合と親睦模合をはっきり区別することはできない。さらにいえば、どちらが良い悪いではなく、両者が共存していることで、模合は成り立っているといえる。
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